キリリク

□彼と彼女の恋愛事情
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「ちょっ、ビアンキ!気配消して近付かないでよ!吃驚するだろ!」

「失礼ね。気づかない貴方の方が問題なんじゃないの。そんなんじゃ鼻歌歌ってる間にナイフで刺されるわよ」

「…っう、ご…ごめん」


ビクついたのを誤魔化すように抗議の声を上げれば即座にそう返された上に睨まれてしまい、思わず謝ってしまう。



「まあいいわ。それよりこれを貴方に渡しに来たの。」



ビアンキがポケットから取り出し俺の目の前に置いたモノ。



「リボーンからのプレゼントよ」



それは透き通ったピンク色の液体が入った、掌にすっぽり収まるほどの大きさの小瓶で。

見るからに怪しいのにリボーンからってのがさらにそれに拍車をかける。



「………何…これ」

「媚薬よ」

「…っびっ!!!?」



恐る恐る手に取り眉を寄せながら尋ねれば、平然と返されたその単語に思わず手にしていたそれを落としそうになる。



「今日骸とワイン飲むんでしょう?その時使うといいわ。」



その上目を細めて意味深に笑みを浮かべて続けるビアンキの言葉は既に俺の予想の範疇を超えたとんでもないもので。



「あ、わかってると思うけど貴方が飲むんじゃなくて骸に飲ませるのよ?」

「な…何でお前今日の夜ワイン飲むの知ってんの!?つーかこんなの使えるわけないだろっ!!!」

「あら大丈夫よ?効果は保証するわ。私もたまに使うんだけど。ああ、いいこと教えてあげる。使う時はね…」

「っあああー!もうっ!!なに恥し気もなくそんなこと言っちゃってんのっ!?」



放っておいたらとんでもないところまで話し続けそうな勢いのビアンキに、慌てて口を塞いで強制的に話を終了させようと手を伸ばせば



「…っわわ」



逆に力任せにネクタイを引っ張られ顔面をテーブルにぶつけそうになる。



「…ちょ、ビア…っ!」



文句を言おうとすれば、先程までのからかうような笑みを消し射抜くような真剣な瞳で



「リボーンからの伝言。『最後のチャンスと思って死ぬ気で頑張れ』だそうよ」

「……へ、何…言って」



意味深なことを告げるビアンキに続く言葉を失って。



「いい加減ママゴトみたいな付き合いから卒業しなさいって言ってるの。二十歳越えたマフィアのボスが未だに童貞とか笑えないわよ?」

「…なっ!!!」



(…なんでそんなこと知ってるんだよ!!?)



もう驚き過ぎて声も出ない!

パクパクしながらビアンキを凝視すれば満足げに笑った彼女は引っ張っていたネクタイを放した。



「あ、そうだわ。もう一つ、これは私から忠告しておいてあげる」

「…な、なんだよっ」

「そろそろ根性見せないと、愛想尽かした骸に捨てられるわよ?」

「…っ!」

「まあそういうことだから、せいぜい今日は頑張るのね」

「…ビ、ビアンキ!」



言うだけ言ってさっさと出て行ってしまったビアンキを呆然としたまま見送って。


話の展開についていけずしばらく呆けていた俺は、数分後やっと我に返って残された小瓶にゆっくりと視線を移した。







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