キリリク
□sakuraドロップス
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そして季節は何回も何十回も何百回も巡って。
「圧巻ですね」
巨大な桜の大木の下、藍色の髪を靡かせた女性が、綺麗な紅と蒼の瞳で上を仰ぎみて呟いた。
「この桜の木さ、変わった名前が付いてるんだって」
その隣に寄り添うのは、大きな茶色の瞳に、茶色のふわふわの髪の青年。
「どんな名前ですか?」
「『猫泣き桜』だって」
茶色の瞳の青年が告げた桜の名前に、隣で桜に魅入っていた女性はオッドアイの瞳を瞬かせた後、くすりと笑った。
「…それはまた、変わった名前ですね」
「昔ここの桜の木の下でさ、伴侶を亡くしたメス猫が、死んじゃったオス猫にずーっと寄り添って死ぬまで泣いたって言い伝えがあるらしいよ」
「……そう、ですか」
「どうしたの?」
「いいえ、その猫の願いは叶ったんだろうなって思ったんです」
「……願い?その猫何か願ったの?」
「さあ、どうでしょう?」
「なんだよお前テキトー言っただろ?」
「クフフ、ねえ。もし僕がそのメス猫の生れ変りで、君がオス猫の生れ変りだって言ったら、信じますか?」
「………え?」
降り注ぐ桜のシャワーの下、茶色の瞳が目の前の人物を見つめる。
その大きな瞳に、自分が映し出されていることに満足した彼女は微笑んだ。
「冗談ですよ。何呆けてるんですか」
「……お前が言うとなんかこうっ、信憑性あるから仕方ないだろっ」
「クフフ。すみません」
「なあ、来年もまた見にこよっか。」
「……はい」
差し出された青年の手を取ってゆっくりと二人、歩き出す。
「ついでに来年はさ、隣町の公園の桜も見に行こう?」
「いいですけど、約束破ったら許しませんよ?」
「わかってるって。今度は破らないよ」
「……え?」
その言葉に目を見開けば。
「どうしたの?骸」
不思議そうに首を傾げながら優しく微笑むその姿に、優しく自分の名を呼んでくれたその声に安堵して。
「何でもないです。今、お腹の赤ちゃんが動いた気がしたので」
「ええええっ、ホントにっ!?」
「あっ、綱吉君。赤ちゃんが驚くから大きな声出さないで下さい」
「わっ、ご…ごめん」
慌てる綱吉に笑いながら、骸は桜の木を見つめる。
「…むくろ?どうしたの?」
「来年は3人で見れますね」
「うん。そうだね」
二人手を繋いで、笑いあいながら、ゆっくりと歩く。
まるで祝福するように絶え間なく降り注ぐ桜のシャワーを浴びながら。
(ねえムクロ。君の願いは、ちゃんと叶いましたよ)
骸はポツリ、呟いた。
見上げれば。
僕達の頭上には降り続ける桜の花弁。
ひらひらと落ちて。
地面を覆いつくして。
静かに眠る、きっともう桜の木と一緒になった、2匹の上にも降り続けて。
また生まれ変わるのならば、
どうかまた
ツナヨシの隣で……
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