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□例えばこんな嵌り方
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「………ん」



テーブルの上にはすでに形だけの教科書とノート。

開けっ放しの窓から聞こえるイーピンとランボのはしゃぎ声をBGMに俺は。



「…ボ、ボンゴレ」




ほんのちょっと唇を解放した時に耳に届いた、俺を誘惑する声と、視界いっぱいに映る潤んだ瞳に誘われるように、骸の後頭部を優しく押さえつけてまた自分の唇を骸のそれへと押し当てた。







例えばこんな嵌り方







人間って単純だよなって思う。

いや、単に俺がそうなだけなのかもしれないけど。

色々思い悩んでいた数か月は一体なんだったのか、今の自分の気持ちを受け入れちゃったらなんかもう自分でも驚くくらい気持ちが軽くなって、後はただただ出てくる欲に素直に従うだけで。

リボーンのいいつけを守って毎日せっせと俺の勉強を見にやってくる骸を押し倒してその唇を貪ること既に2週間。


(……それでも最初の頃は30分くらいは我慢してちゃんと勉強してたんだけどなあ)


今じゃ開始から10分も持てば良い方で、今日に至っちゃ開始5分でこの有り様。

でもだって仕方ない、骸の顔が全部悪い。

教科書に視線を落としてるだけで色っぽいとか、俺の間違ってる答えを見て呆れたような視線を寄越すその仕種にすら誘われてるような錯覚に陥っちゃうとか、これ全部俺の問題じゃなくって絶対骸のせいだ、と思う。

だから今日もそのお誘いに素直にのって、骸とのキスに溺れる。

その柔らかい感触を楽しんで、甘い咥内を堪能して、時折漏れる声に欲を増幅させられて。

本当は、もうとっくにキスだけじゃ収まりきらない欲が俺の中から湧き出してきてるけど、流石にここじゃいつランボ達に邪魔されるかわからないから、これ以上先には進めない。

だから今日もその実行できない欲の分もあわせて、満足するまで骸とキスを繰り返す。



「…君、盛りのついた犬ですか」


とりあえず満足するまで骸を堪能した後、俺の下で息を荒くしている男を解放すれば、今まで俺が塞いでいた口から零れるのは、今までの甘い時間とはかけ離れた辛辣な言葉。

けど、そんな息も整わないまま、白い肌を赤く染めて、蒼と紅の瞳を潤ませたまま言ってたら、言葉の意味が全く変わってくるって、コイツわかってんのかな?いやきっとわかってないし、それがまたなんだ、俺の気分を良くさせるんだけど。



「言っとくけど悪いのはお前の顔がルール違反だからだよ」

「……あのねえ。二言目には僕の顔を理由にするの、いい加減やめてもらえません?」



あの日以来ずっと、何かある度に口癖のように告げる言葉に、不貞腐れたように唇を尖らせて抗議の意を示す骸。

最初に言った時にはちょっと傷ついた表情してたくせに、今じゃ俺が言う意味が理解できちゃったのか、ちょっと嬉しそうにしてる。

もちろんそれを悟られないように口や態度は態と怒ったようにしてるけど、超直感なんて必要ないくらい隠しきれてないところが、はっきり言って可愛いし、それを可愛いなんて思っちゃうあたり、俺はもうかなり重症だ。




「あー、あと。」

「あと、なんですか」

「その性格も、けっこうヤヴァいかも」

「……は?」




俺と同じ男で、俺より背が高くて、街を歩けば女子は必ずその美貌に見惚れるくらいだし、クフフなんてあり得ない笑い方して、将来の夢はマフィア殲滅なんて宝くじ当てるよりあり得ない夢を自信満々に語っちゃうような、出会った頃の俺からすればどっか違う星から来たような男だと思ってたけど。

実際は、超がつくほど真面目で約束はちゃんと守るし、意外にも俺以上に常識人で、クローム達のことは家族のように大切にしていて、こんな小学校で時を止めたような俺の頭に合わせて丁寧に勉強だって教えてくれる。

ぶっちゃけ今の俺の守護者達の中で一番まともなんじゃなかいかって思う。


だけど、やっぱりダントツの一番は。




「…むくろ」




しつこくまたキスをせがむように距離を縮めれば



「…もうっ、」



小さく文句の声をあげながら、でも抵抗するわけでもなく俺の首に腕を絡ませて目を閉じ、次の瞬間を待つ。

そーゆーとこが、ダントツぶっちぎりで超ヤヴァい。

なんだかんだ言って骸は、俺がすることを全部受け入れてくれる。

毎回俺がしつこいくらいしてるキスだって、嫌がってる素振りはしても、ちゃんと受け入れてくれる。

俺にだけ見せる、俺にだけ甘くて、俺にだけ従順なところ。

そのくせもう2週間もこんな毎日送ってるのに、毎回見せる恥じらいとか、なんかもう俺の知ってる「六道骸」からはあり得ない。

あり得ないから、俺だけしか知らないから、そのギャップにまんまと嵌ってしまった。

これが骸の言うマフィア殲滅のための第一歩で、その罠に呆気ないくらい簡単に嵌っちゃったんだとしてもまあ別にそれでもいいいか、俺ボンゴレを守らなくちゃとか別に思ってないし、なんてリボーンが聞いたらその場で半殺しにされそうなことを思っちゃうくらいには、嵌ってる。

それもかなり深みに。

自覚していても、本当もうサイアクだ、と思う余裕すらないくらいに。



(……ああ、半年前の俺には想像できないよなあ)



まだ骸に怯えていた頃の俺とか、まだ俺を怖がらせていた頃の骸の今じゃもう見ることもなくなった作り笑顔とかを、どこか遠くで思い出しながら。



「……ん、っふ」



俺の下でさっきよりもっと目を潤ませて可愛い声をあげる恋人にもっと夢中になるべく、その細い華奢な身体を抱きしめた。






end


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