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□"永遠"を刻むオト
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余りの眩しさに咄嗟に目を閉じれば、瞼の向こうすぐに光はおさまり、その代わりに手に伝わり始めた、僅かな振動。




「………?」



不思議に思って目をあければ、




「……う……そ」

「…針、が」



驚いて言葉を続けることが出来ない僕たちに見せつけるように、まるでずっと動いていたかのように、チクチクと、今にも止まりそうなぎこちなさで時を刻んでいる針。




「っえ、えええ。ど、どうして!?」

「……君、何したんですか」

「えっ?お、オレぇ?俺何にもしてないって!骸の幻術じゃないの?」

「何故僕がそんなことしなくちゃいけないんですか…」

「……え。じゃあ、………これって」





唖然としたまま二人して互いの手の中で規則正しく時を刻みだした時計を見つめていたら、隣で小さく彼がもしかして、と呟く。




「ねえ、これって、さ。初代の二人の意志、なんじゃないかな」

「馬鹿なこと言わないで下さい。何百年も前に死んでる人間に何ができると…」

「で、でも元々二つとも動いてなかったのに、たまたま突然一緒に動き出すなんて、いくならんでもそんな偶然、出来過ぎじゃない?」

「…そ、それはっ」




口どもる僕と何故か勝ち誇ったように笑う彼。

そして僕たちの手の中には、同じリズム、同じ時間を指す二つの時計。





「やっぱり俺はこれ、初代の、あの二人の意志だと思う」

「何故、そう思うのですか」

「だって二人ともきっと、ずっと会いたくて、この懐中時計にその想いを託してたんでしょ?」



愛おしげに手の中の懐中時計を撫でる彼につられるように自分の手の中の時計の裏蓋に刻まれた文字をなぞれば、




「やっと会えて、嬉しかったんだよ。だからきっと動きだしたんだ」



まるで自分のことのように嬉しそうに語る彼が、



「良かったね、骸」




不意に僕を見つめて泣きそうに眉を下げて呟いた。




「…綱吉?」




その琥珀の瞳が見つめているのは、


その言葉を投げているのは、





「逢えて、良かった。

俺は、やっとお前の願いを叶えてやれたのかな?

俺、言うだけ言って、結局あの後なんにもしてやれなかったから…」




僕じゃない、僕のこの右眼に宿った、初代霧の守護者なんだろう。



6つに分かたれた僕らが一つに戻る時、

最後に僕の中に戻った彼に、綱吉は確かに約束していた。


『お前の望みも絶対、俺が叶えるから』って。





(……そうか、あの時彼が君に託した願いは、コレだったのか)





じわりと熱くなる右の眼の奥。


何故か胸を突く、言いようのない感情に、


僕は否が応にでも、それを確信して。



(ほんと、お人好しすぎますよ。)



初代霧の守護者なんて、この六道眼の中に残った記憶の欠片のようなものなのに…。


意識体の彼との約束を守れていなかったことなどに、君が心を痛める必要なんて、どこにもないのに。



(……だけど、これが僕が選び、僕が信じた、彼だから)



こんなお人好しに絆されるなんて、僕も相当お人好しだと、目の前の彼に気づかれないように小さく苦笑して。




「……彼の願いならちゃんと叶いましたよ」

「……骸?」

「僕の右眼がそう、教えてくれています。

それに、叶ったからこの時計は動きだしたのでしょう?

君がさっき僕に教えてくれたじゃないですか」




僕の言葉に、一瞬虚を突かれたような顔をした綱吉は。




「そっか、そうだね」




その後泣きそうになって、それでも、やっぱり嬉しそうに笑うから。


零れ落ちそうなその滴をぐいっと拭い取ってそのまま彼の顔を両手で包む。




「……むくろ?」



そして戸惑ったような彼の唇に、そっと自分のそれを押し当てて、





「…これは、僕の中にいるだろう、初代霧の守護者から、お礼の気持ちです」




至近距離でそう囁けば、せっかくぬぐったばかりだというのに、破顔した彼の頬に零れる、滴。


それにくすりと笑って彼を解放すれば、代わりにゆっくり僕へと伸ばされた彼の手が、

さっきまで僕がしていたように僕の両頬をまるで壊れ物を扱うようにそっと捉えて。

そのまま自分の方へと引き寄せるから。

僕は、静かに殊更ゆっくりと近づいてくる唇を待って、瞳を閉じて。


僕の手の中の、時を越え僕たちの手元に届いた初代の二人のプレゼントに、そっと祈る。




(………ねえ、もしも)




偶然、綱吉の元へ初代大空の時計が届いて、


偶然、僕が保管していた初代霧の時計が落ち、


そして偶然、2人がその時計を手にした時に同じタイミングで動き出したことが、




(もしも、彼が言うように貴方たちの意志であるのなら……)





これから先もずっと、



僕らが共にある限りずっと、



止まることなく、刻み続けて下さい。







(――――今を生きる、僕らの、刻(トキ)を………。)








そして彼の唇が僕に触れた瞬間、



僕の祈りに応えるように、



僕たちの手の中のものが小さく光り、温かくなったのは、




きっと、気のせいなんかじゃ、ない。













"永遠"を刻むオト









end

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