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□"永遠"を刻むオト
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「骸。俺は絶対にお前を裏切らない。

例え世界中の人間がお前の敵になったって、俺だけはどんな時でもお前の傍にいて、ずっとお前を護る。

誰よりも傍にいて、誰よりも幸せにするよ。

後悔なんか、絶対にさせたりしないから。」



「………」




真っ直ぐに、僕へと差し出された手。

迷いもなく、綱吉の意志を表すように、ただ、僕だけを求めて差し出された手。

僕はその差し出された手をただ、じっと見つめる。

彼の真意を確かめるように。

彼の想いを確かめるように。

"あの時"と、同じように。



「ねえ、だから俺を信じてよ。

もし俺の隣に居て俺のこと期待はずれだと思ったら、

もし俺がお前を裏切ったりすることがあったら、

その時はいつでも俺の命をあげる。

……だから」




一年前、僕は彼の言葉を信じ、彼の手を取った。

あの時、彼の手に触れた時、流れ込んできた記憶。


それは、彼自身が大事にしまっていた未来の僕と未来の彼の想いの塊であり、彼が初代霧であり最初の六道骸から渡されたという懐中時計に籠められた想いの塊で。




「俺を…選んでよ」



揺らぐことなく真っすぐに僕を見つめる眼差し。

揺らぐことなく真っすぐに僕に伸ばされた手。



一年前の僕は混乱していて、僕は、あの時彼の手を取ったのは、自分の意志なんかじゃなくって初代の、そして未来の僕の想いに絆されているのだと思った。



だから。




「…むくろ?」



だから目覚めた時、彼にあの世界でのことを覚えているかと尋ねられて、覚えていないと咄嗟に嘘をついた。



自分の気持ちに自信が持てなくて。

彼の言葉を信じることが怖くて。




「………少しでも」

「……?」

「少しでも僕を失望させるようなことがあったら、その時は躊躇うことなく本当に君の命もらいますよ」

「いいよ、いつでももってってよ」



けれど、あの時と同じように脅しをかけたって、やっぱり君はあの時と同じように嬉しそうに笑うんだ。



だから結局僕は、ゆっくりと差し伸べられた手を取り、見てるこっちの方が恥ずかしくなるような彼の表情に我慢出来なくて視線を逸らす。



あの時の、ように。



「……だいたいっ。突然過ぎます。ここに来るつもりだったのなら、もっと前から準備しておけば良かったでしょうに」

「……あ、それはさ。」



苦し紛れに話題の矛先を変えれば、綱吉は何かを探すようにごそごぞと自分のズボンを探り、僕の目の前に鈍く輝く時計を差し出した。



「……それ」



彼の手の中の物に、僕は目を見開いて言葉を失った。

だって、その手の中にあるものは僕が持っているものと全く同じで。



「これは、初代大空の持ってた懐中時計なんだって。歴代ボスの遺品の整理をしてたら出てきたからって、何故か九代目が俺宛に送ってきて、ちょうど昨日届いたんだ。」

「……プリーモの?」

「うん。で、なんとなく開けてみたら裏蓋にメッセージが刻まれてて。それ見たらさ、骸が持ってた初代霧だった骸の懐中時計のこと思いだしてさ。それで、今日が骸を助けに行った日だってことに気づいて。そしたらどうしてもお前と此処に来たくなっちゃってさ。リボーン拝み倒して手配してもらったってわけ」

「………」



これももう針は止まっちゃってるんだけどね、と残念そうに呟く彼の言葉を思考の端で聴きながら、僕は彼の手の中の懐中時計をじっと見つめる。



裏蓋には確かに僕が持っているのと同じように文字が刻まれている。


けれど。



「……違う」

「え?」

「刻まれた言葉が…、違います」

「…えっ、そうなの?」



きょとんとする彼を余所に僕は慌ててポケットの中から懐中時計を取りだした。



「それ……初代霧の……?」



綱吉の手の中のものと同じように僕の手の中で鈍く光るそれは、表の細工などは全く一緒でお揃いの時計であることが一目でわかる。

長い年月のうちに傷だらけになり、ところどころ錆びてしまった元々は相当高価だったと思われるそれに綱吉が驚いたように目を瞬かせた後、嬉しそうに僕を見た。




「骸も持って、きてたんだ」

「別に、いつも持ってるわけじゃないですよ。たまたま、君が来る前にしまってあったはずの棚から何故か落ちたんですよ。仕舞おうと思っているところに君が来てそのまま連れてこられたので…」




嬉しそうに尋ねる彼に、なんとなく、いつも肌身離さず持っているように思われるのが嫌で、言い訳がましく弁解して、僕は裏蓋に刻まれたメッセージを見るべく蓋をあけた。





――――その時。






「「っえ?」」





突然僕たちの手の中にあった時計が強い光を放ち、部屋中が真っ白に染まった。


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