(……やっと、…会える) 長かった。 長かった俺の命の炎が、今やっと燃え尽きようとしている。 あれから俺は彼の言う通り生き続けた。 妻を取り、 子供を育て、 ボンゴレを譲り、 誰にこの命を奪わせることもなく、 ただ、その時が来るのを待った。 (………骸、俺、ちゃんとお前の言葉守ったよ) 目を閉じれば、まるで昨日のことのように蘇るあの瞬間。 あの時、どうしてお前があんな自ら命を絶つようなことをしたのか、わからなかった。 どうしてあんな幸せそうな顔をしていたのか、わからなかった。 けれど、クロームから聞かされた真実に、確信したんだ。 俺がお前を愛していたように、 やっぱりお前も、 俺のことを愛してくれていたんだと。 最期の瞬間に、他の誰でもない俺を、お前が選んでくれたんだって。 だから俺はお前の言葉を文字通り命がけで守ったよ。 殊の外俺の寿命は長くて、こんなに時間が経ってしまったけど。 あとは、お前がちゃんと約束通り俺を迎えてくれるだけだ。 (……ねえ、骸。お前最期に言ってただろ?この生では俺たちは相容れないのだと。) ならば、俺がこれから向かう、お前が迎えてくれるその世界なら…? もしくはお前が導いてくれる、その先の世界なら、どうなの? 俺たちは、こんな回りくどい、面倒な愛情を交わさなくても一緒にいられるだろうか。 特別なことなんて、これっぽっちも望んじゃいないんだ。 ただ、世界中に溢れてる、ありふれた恋人達のように、 片時も離れず傍にいて、 絶えることなく愛を交わして、 飽きるほどに触れられる、 そんな二人になりたいんだ。 (……馬鹿げた願い、だな) そんなこと、自分だって痛いほどわかっている。 叶う可能性など、限りなくゼロに近い。 けれど、それでも。 それでも願うくらいなら、いいだろう? お前の最期の言葉を信じて、何十年も頑張ってきたんだ。 それくらいのご褒美があったって、いいはずだ。 (むくろ。むくろ。むくろ) ようやく逢える最愛の人物の名を、我慢出来ずにココロの中で呼び寄せるように何度も繰り返せば、 「クフフ、君ににしては上出来でしたね」 そんな声が、どこか遠くから聞こえたような気がして。 「当たり前だろ。約束したんだから」 そう、口にしたはずの俺の声はもう、音にすらなっていなかったけど、 あの時の骸に負けないほどの微笑みを湛えて俺は、 この生の幕が閉じるその瞬間を待つべく、 そっと瞼を閉じた。 ねえ、むくろ。 もしおまえが本当に迎えにきてくれるなら 一番最初に伝えたい言葉があるんだ。 ずっと伝えたくて、 仕方なかったんだ。 たった一言だけ 愛してる、と。 その一言だけを、 何度だって、何度だって お前がしつこいと怒るくらい、 何度だって、伝えたい。 . |