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□"永遠"を刻むオト
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カシャン



小さく響いた物音に視線を向ければ、大事にしまってあったはずのものが床に転がっていた。



「…おや、」



驚いて駆け寄り床に転がった鈍く光輝く金色の物体に手を伸ばす。

中を確かめるようにそっと蓋を開ければ、僕が手にした時から、いやそれよりもきっとずっと以前から時を刻むことを諦めてしまった針。

もう二度と時を刻むことなどないのであろう文字盤をそっと指でなぞり、裏蓋に刻まれた文字へと視線を向ける。




この懐中時計の持ち主は、一体どんな想いでこの文字を見つめていたのか。



触れているだけで流れ込んできそうな強い想いにかぶりをふり、しまっておいた場所へと戻そうとした時、猛スピードで近づいてくるよく知る気配を感じて動きを止める。





その直後、



「骸っ!!!」



思った通りの人物が豪快に部屋の扉を開け僕の名を叫んだ。

余りの音に懐中時計を握りしめたまま驚いて振りむけば、視線の先、僕の瞳が捉えたのは全速力でここまで来たのか肩で息をしている綱吉で。



「良かった。骸いた!」



僕を見るなりそう叫ぶと、ずんずんと大股で距離を縮めて徐に僕の腕を取った。




「よし!じゃあ時間ないから急ぐよ!」

「……え、ちょ、ちょっと」



そのまま今来た道を戻るべく走り出そうとする彼に半ば引きずられる格好になってしまった僕は、手にしていた時計を失くさないようにと慌ててポケットへとしまい込んで。



「ちょっ、待って下さい!行くってどこ行くつもりですか!?」

「ちょっとイタリアまで」

「っはぁ!!?」

「理由は後で話すから。とにかく時間ないから走って!」

「ええ、ちょっと!」






そうして僕は。



ポケットの中に古ぼけた懐中時計を入れたまま、碌な抵抗すらさせてもらえず彼に引きずられて空を飛び海を渡った。







"永遠"を刻むオト






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