BB

□おめでとう
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「ハザマ、私だ」


ノックもしないで入り込んできた仮面の男にハザマは溜め息をつく。執務室に響くペンを走らせる音は止まない。


「私の知り合いに「私」という方はいませんがね。何か用ですか?レリウス大佐」

「何を苛ついている」

「苛ついてなどいませんよ。ただこの書けども書けども終わらない書類に嫌気がさしているだけです」


人はそれを苛ついているというんだ、とレリウスは思ったが口には出さなかった。どうやら本当にすごい量の書類であるらしい。ハザマの手のスピードは喋りながらでも、遅くなることはない。


「というか、本当にどうしたんですか?」

「…ふむ……手伝ってやろうか」

「…………はい?」

「どの書類なら…お前でなくても平気だ?」

「このへんなら…って、え?レリウス?本気ですか?」

「…冗談を言うような顔に見えるか?」

「いや、顔はよく見えませんけどね」


彼等にしては珍しく、どうでもいい会話。それだけハザマは動揺していた。

自分の興味があること意外にはまったくの無関心であるあの、あのレリウス=クローバーが今、手伝うと言わなかったか。


「どうしたんですかレリウス…何か興味がある書類でも?いや、ここにそんな書類は…」

「ハザマ」


自分の思考を纏めるように饒舌なハザマをレリウスが呼ぶ。顔を挙げれば彼の手がすっと伸ばされ、ハザマは反射的に目を閉じた。


「今日はお前が生まれた日だからな」

「……は?」


ぽすん、と音がしそうに頭に手を置かれ、次いでわしゃわしゃと頭を撫でられる。


「終えたら来る…また、後でな」


乱れた髪のまま呆けているハザマをおいて、レリウスは去っていった。


『ハザマちゃーん、顔真っ赤だぜ』

「……」

『夜が楽しみだなぁ、おい』

「テルミさん、ちょっと黙ってください…」

『ヒヒッ』


執務室には、しばらくペンの音は聞こえなかったという。





end
誕生日おめでとう!!

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