兄弟パロ

□痕
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「…ハザマ」


己の執務室に入ってきた男に呼ばれて外を見ていた視線を戻す。自分の事を階級なしで呼ぶのは兄弟とこの人物くらいだ。最近知り合った男もそうだったかもしれない。


「レリウス」


靴を鳴らし、マントを揺らしながら歩いてきた彼を呼び捨てにするのも自分達くらいだろうか。


「いや……」

「…?」


近くまで来て歩みをぴたりと止めたレリウスは珍しく、言葉に詰まった。不思議に思い首を傾げ、その先を待つ。

仮面の奥から感じる視線はハザマの首もとに集中していた。

ややあって伸ばされた彼の手が触れたのはやはり首。


「なんですか?」

「…見えているぞ…気を付けることだ」

「…見え…?…っ!?」


からかうような口調にハザマも手を首に当てて数秒。見えている、という単語に顔を赤くし、両手で勢いよく隠した。


「あ、あの人は…!」

「ふ…随分と…激しそうだな?」

「う、うるさいですよレリウス!」


そこにあるモノを必死に隠そうとするが、狙ったように付けられた赤い痕は消して隠れることもなく。


「独占欲の強い…テルミらしいな」

「うぅ…見えるとこにつけるなって言ってるのに…」

「……少し…妬けるな」

「はい?…っうわ!?」


見せつけられているようだ、そういってレリウスはハザマとの距離を詰め、壁際に追い詰めると、その肩に顔を埋めた。

一瞬の事に反応出来なかったハザマが小さな悲鳴をあげる。押し返そうにも体格差は歴然。むしろ腕をしっかりと壁に縫い付けられてしまった。


「…レリ、ウス!」


しかりつけるように名を呼べば耳元でレリウスが笑う。それにビクリと肩を揺らせば、気をよくしたらしい彼がまた笑った。


「…っ!」


首もとに感じた舐められた感覚にハザマは思わず息を止め、ぎゅうと目を閉じる。


「あまり…無防備にそういったものを…見せつけないことだ」

「…いっ…!」

「逆に…奪いたくなる」


チクリとした感覚で、痕を付けられたのだと理解したハザマが先程よりも激しい抵抗を見せるが、やはり覆せない力の差。


「離し、て下さい!」

「わかったか?…テルミ」

「……余計なお世話だぜ博士」

「…は?」


急に感じなくなったレリウスの感覚と共に聞こえた双子の兄、今回の元凶の声にハザマは間抜けな声を出した。


「て、テルミさん」


自分を庇うように立つ彼の背中に安堵を覚えると共に、冷や汗が止まらない。いつからいたのか。どこから見ていたのか。


「さて…帰るとするか」


楽しそうに笑うレリウスが部屋から出ていく。しかしハザマにはもはや関係ない事だった。それより怖い。目の前のテルミが無言なのが凄い怖い。


「……テルミさん?」

「ハザマちゃん」

「は、はい!?」

「帰るぞ」

「…わ、わかりました」


ハザマの腕を掴み歩き出したテルミに、置いていかれないように足を動かす。

家に帰った後にあるであろう出来事に、ため息を吐きたくなるのと同時に少し期待している自分に嫌気がした。






end
気が向いたら続けたい

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