兄弟パロ

□男女?
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ラグナは未だかつてないほど混乱していた。


「ありがとうございました。助かりましたよ」


集団で一人を囲んでいる奴等がいたのでなんとなく見過ごせなくて親切心全開で助けた。そこまでは良かったんだが。助け出したのは知り合いだった。そこまでも良い。

ラグナが助け出したのは最近知り合ったハザマであるはずだ。そして彼は確かに男であったはず。


「どうかしましたか?」


しかし、そう言って首を傾げた相手は、どうみても、女だった。


「え、あ…え?」


混乱した頭で必死に今の状況を整理する。目の前に立つ「ハザマ」はいつもと同じようなスーツを身に付けているが、無駄な脂肪のない括れたウエストが惜し気もなく出ている。ズボンであったはずの下もスカートにタイツ?のような物を履いた実に女性らしいものだった。

そして何よりも。


「…お前、女だったのか?」


男にはあり得ない膨らみが彼、いや彼女の胸には存在していた。

率直に聞いてみれば、「ハザマ」は一瞬驚いた顔をした後、ニヤリと笑う。


「あー…こんな姿で会ってしまえば、まぁバレますよね…そうですよ」

「マジかよ…!」


まるでガツンと鈍器で殴られたような衝撃だ。芝居がかった動きで「ハザマ」は肩を竦める。それから顎に手を当て、ラグナを上目遣いに見つめた。


「…言わないでくださいますか?ラグナくん」

「当たり前だろ!…でも何で隠してんだ?」


辛いんじゃないか?と純粋に心配するラグナに「ハザマ」は俯き肩を震わす。泣いているのか、と慌てて伸ばしたラグナの手が「ハザマ」の肩に触れる。

それで限界だった。


「……っく」

「ハザマ?」

「っあ、ははは!も、もう無理!」

「…?」

「いやぁ純粋ですねぇラグナちゃん…あー、やばいお腹が痛い」

「はぁ?」


先程までのしおらしさは何処へいったのか。目に浮かんだ涙を拭いながら、急に笑いだした彼女にラグナの頭は再び混乱の中へと戻された。


「あ、まだ分かってないですか?」

「…あぁ」


ラグナの前で彼女はくるりと回ってみせる。その仕草は確かに女性のもの。


「初めまして。ハザマの妹のアオと申します」

「妹!?」

「はい。そっくりでしょう?」


まるで悪戯が成功した子供のように、アオが笑う。

ハザマやテルミのそれとは違う無邪気だけれど、何処か挑発的な笑みにラグナの思考回路はようやく落ち着きはじめる。

つまり、からかわれていたのだ。この少女に。


「最初から騙すつもりじゃなかったんですよ?ただ勘違いしているようだったからつい」

「妹がいるとか、聞いてねぇぞ…マジでビビった…」


安堵か呆れか分からないため息を漏らしてラグナは項垂れた。そんな彼を見て、アオは少し考えた素振りをした後、突然握りしめたのはラグナの手。


「…あ?」

「騙したお詫びと言ってはなんですが、これからお茶にでも行きましょう」

「はぁ?」


なんだか、今日は間抜けな声ばかりあげている気がする。そして、彼女の誘いはラグナの同意は無くても既に決定事項らしい。


「ま、待て待て待て!!俺は金なんて持ってねぇぞ!というか手を離せ!」

「私が払うので問題ありませんよ。さて…こないだハザマ兄さまがいいお店があるって言ってたんですよ〜行きましょう!」

「人の話を聞けええええ!!」


ラグナの叫びは聞き入れられることもなく、後にオシャレなカフェで二人の姿は目撃された。





end

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