兄弟パロ
□夢幻
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真夜中。ユウキは約一週間ぶりに家のドアを開けた。
「帰ったぞ…まぁ、誰も起きてねぇか」
レリウスと共に研究に励んでいたが、一週間こき使ってやったら彼が倒れた。倒れたと言っても研究に夢中になった結果、酷使された頭が休憩を求め、無理矢理シャットダウンさせられただけで。まあ、簡単に言えば寝落ち、というやつだ。
「って…ハザマちゃん」
リビングに入ってみれば、そこにいたのは三男。目が覚めてしまったのか紅茶を飲んでいたらしい彼は、長男の姿に驚きはしたがすぐに彼らしい柔和な笑みを浮かべた。
「お帰りなさいユウキさん」
「おー。テルミちゃんは一緒じゃないのかよ」
ハザマが羽織っているカーディガンの持ち主についてからかうように問えば、読めない表情で、強いて言えば困ったように笑うだけだった。おそらくそういった事の後なのだろう。
「それより行ってあげたらどうです」
「あ?」
「寂しがっていましたよ」
ねぇ?とお返しとばかりにからかう口調のハザマ。それに頭を掻いてから、軽く頭を撫でて髪を乱してやる。
そのまま各々の部屋へと足を向けて、繋がるドアを開ける。後ろで「もう」と言う声が聞こえたが笑って無視した。
双子の部屋を越え、長女の部屋を越え、自分の部屋も越え。たどり着いたのは末っ子の部屋。
ドアを開けると予想通り真っ暗な部屋には、規則正しい寝息が響いていた。
ベッドの中で、丸まるように寝ている彼の横に寝転がる。ギシリとなったそれに末っ子…カズマが小さく声を上げた。
「ん…」
「カズマちゃん」
元々、睡眠を邪魔するつもりはない。小さく呼び掛け、その額に口づけを落とした。
「……ユウキ、さん?」
予想に反して目を開いたカズマにユウキは、頭を撫でることで睡眠を促す。
しかしカズマは焦点の合わない寝起き特有の目でユウキをなんとか捉えると、彼の首に腕を回した。
普段のカズマなら恥ずかしがって絶対にやらない行動にさすがのユウキも反応に困っていると、小さな声が自分を呼んだ。
「ユウキさ、ん」
「何よ」
「会いた、いで…す」
目の前にいるだろうが、と言おうとしてユウキは押し黙った。
普段ならしない大胆な行動も、不明瞭な発言も、カズマが今の状況を夢だと思っているから、という可能性が高い。
離さないと言わんばかりの強い力でしがみつかれ、ユウキの中に浮かんだ感情は愛しさ。
「おやすみカズマちゃん」
彼の目元に浮かんだ涙を手で拭いながら、明日は構い倒してやろう、と考えながら温もりに身を任せ、意識は闇へと溶けていった。
end