兄弟パロ
□お届け物です
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「あ」
トリニティは休み時間、はしゃぐクラスメイト達の中から一つを聞き取った。控えめな彼らしい小さな声。
「カズマさん。どうしましたぁ〜?」
「あ、トリニティさん。…お弁当を忘れてしまって」
あはは、と笑う彼の隠れた眉は少しだけ残念そうに下げられていた。
「お兄さんが作ってくれてるんでしたよね」
「はい。…あー…今日はゆで卵だって言ってたのになぁ…」
効果音をつけるならずーんであろうか?それほどに落ち込むカズマにトリニティはつい微笑ましく感じてしまう。
「もしよろしければ今日のお昼、ご一緒しませんか?」
トリニティの誘いにカズマは悩む。どうせ食堂には行かねばならないが、彼女と行動するという事は必然的にあの姉妹とも行動することになるわけで。
それは少し遠慮したいというのが本音である。
「あの方は…」
「はい?」
急に騒がしくなった教室。トリニティが指差した場所に視線を向け、カズマは大きく目を見開いた。
「カズマ」
「ハザマさん!?」
黄色い歓声の原因は己の兄だった。ひらひらと手を振る彼は、カズマと似てはいるものの、前髪はキッチリと整えられているし、人の良さそうな笑みを浮かべている違うタイプの人間だった。
「どうぞ。忘れていったでしょう」
「ありがとうございます!!忙しいのにすいま…むぐ」
「学校に少し用があったんで気にする必要はないですよ」
謝罪を述べようとしたカズマの口にハザマの人差し指が押し当てられる。ね?と微笑まれてしまえば、兄弟であるカズマですら頬に熱が集まった。
「えっと…用ってなんですか?可能なら手伝いますよ」
恥ずかしさをごまかす様に尋ねれば、ハザマは廊下の先を眺め、軽く手を挙げる。視線の先を見てみると、そこにいたのはもう一人の兄だった。
「どうしたのハザマちゃんって…。ついでってカズマちゃんの事か」
「テルミさんまで…本当にどうしたんですか?」
「んー…説明するのはいいけど、ここでは無理だぜ?」
言われて、相当の視線が自分たち兄弟に向いているのに気付いたカズマは、すいませんと兄達に頭を下げた。
「じゃあ場所を変えるとしますか。行きましょう」
「だなー」
「あ、はい」
あっという間に三人が出ていき、教室に再び静寂が訪れた。
トリニティはカズマと食事が出来なかったことを、残念に思いながら、友達の待つ食堂へと向かうのだった。
end