おいでませルミナシア
□風vs炎
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サレ→ヴェイグ+ルーチェ
クエストの帰り、突然感じた殺気に咄嗟に防御姿勢をとった。
突風の後に現れた青年の手から放たれるもの。頬を掠めた風が、頬に一筋の滴を垂らさせたのを軽く無視すると、双剣を嫌な笑みを浮かべる青年に降り下ろす。笑った彼は細めの剣でその力を受け止め弾き飛ばした。激しい金属音が辺りに鳴り響き、お互いに距離を取った。
「…イラプション!」
「ガスティーネイル!」
お互いが唱えた魔術がぶつかり合い、相殺する。爆風が髪や服をはためかせるのもまた無視した銀の青年は真っ直ぐな瞳を紫の青年に向ける。
「…君は?」
「ふふ…ちょっと遊んでよ」
戸惑ったように声を出した銀の青年…ルーチェは前で不敵に笑う青年、サレが再び構えた剣に応えるようにその双剣を構えた。
一撃目を片方で流すと、もう片方で追撃を奮うが軽く避けられる。至近距離で見つめたその顔に確かに浮かぶ憎悪に、ぞくぞくと背筋に何かが走る。光だした彼の手にハッとして距離を取る。
「ウインドエッジ!」
今度は避けきれず、当たったものの咄嗟に体をひねりダメージは最小限で抑える。赤色が額を伝う。
「君はヴェイグのなんなんだい?」
唐突に聞かれた疑問にルーチェが軽く呆気に取られていると、距離が一気に縮まり鳩尾に強烈な足蹴りが入る。詰まる息をぐっとこらえ、吹き飛ばされながらもその体に魔神剣をお見舞いしてやる。反撃してくるとは思っていなかったらしい彼は避けれずに舌打ちをした。
「…ヴェイグに何かするの?」
「どうかな?ヴェイグが大人しく僕の物になってくれば優しくするよ」
でもそれじゃつまらないな、なんて笑う青年にルーチェは眉をしかめる。ルーチェは別にこの世界のヴェイグとは特に関係は持っていない。しかし話せば愛しいあの人と同じ感触を感じる彼を大切には思っている。
「…ヴェイグは、物じゃないよ」
クスリと笑った彼とは相容れないと知る。それならば自分の起こす行動は決まっていた。
「やらせないよ」
「君にできるかな?…せいぜい足掻いてよ」
再び走り出した二人の間には冷たい風が吹く。振りかざそうとした二人の剣は第三者により止められた。
「ルーチェ!サレ!」
「「!」」
息を切らしたヴェイグの叫び声にサレが驚いたように剣を止めたことで、慌ててルーチェも双剣を引き留めた。そこで斬りかからない辺り彼のお人好し具合がよく出ている。
「今回はここまでにしよう…またねヴェイグ」
走り寄ってきたヴェイグが近くに来る前にサレは風を纏ってその場から消えた。
「……」
「ルーチェ大丈夫か?」
「大丈夫だよ。ありがとうヴェイグ」
微笑んで返せば、ヴェイグの困ったような顔と目が合う。首を傾げれば彼は言いにくそうに口を開いた。
「すまない…巻き込んでしまったな」
ヴェイグの言葉にルーチェは目をパチパチとさせる。そんなこと、考えてもいなかったらしい。それから優しく笑う。
「俺ね、巻き込まれるのには慣れてるんだ」
「…?」
だから、気にしないで。そういうと今度はヴェイグは目を瞬かせる番だった。それからふっと笑って踵を返す。視線の先には船が待っていた。
「よかった。迎えに来てくれたんだ」
「ルーチェ」
「うん?」
「……ありがとう」
背を向けたままヴェイグが呟く。やはり少しだけ愛しい彼とは違うけれど、こちらの彼も同じように耳を赤く染めているのに気付き、ルーチェは軽く微笑んだ。
end
ルーチェは炎系の魔術はいつでも使えます。
ルミナシアヴェイグのことは弟か何かに思ってるルーチェ。