短編
□馬鹿ばかり
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「…ん?」
普段も十分騒がしいが、それ以上に騒がしいホールで、クラトスは立ち止まった。
人だかりの外側にいたロイドを見つけ、この騒ぎの原因を聞いてみることにした。
「なんの騒ぎだ?」
「クラトス。いや…トキとルーチェがさ…」
言われて騒ぎの中心に目を向けると、異世界のディセンダー二人と、巻き込まれた可哀想な異世界の二人がいた。
「絶対ヴェイグ…リュングベルのが可愛いよ」
「おめでたいのはお前の頭の中だけにしとけや。アウリオンのが可愛いに決まってるだろ」
「ルーチェ…」
「はぁ…」
「な?」
「…なるほどな」
一通りの流れで理解したらしく苦虫を潰したような顔になったクラトスにロイドも苦笑いも漏らす。ルーチェとトキ。彼らはこの世界の者ではない。
しかしハロルドの実験によって来てしまっている訳だが。まぁ、それは構わない。他の世界のディセンダーである彼らの戦闘能力は高い。
しかし問題はこれなのだ。
「リュングベルはいつだって俺の傍に居てくれた。どんな時も、俺を俺として見てくれた…だから俺は君が好きなんだ」
「…ルーチェ。気持ちは嬉しいが、場所を考えてくれ…」
ルーチェが恭しくリュングベルと呼ばれた青年の手を取る。困惑と呆れを混ぜた表情の中でも、やはり満更でもないのだろう。頬はほんのり赤く染まっていた。
この船にもヴェイグ・リュングベルという人物は存在するが、彼はグラニデという世界から来ている。こちらのヴェイグとは違い、長い髪を高く結っており、彼が動く度にさらさらと揺れる。
ルーチェはこのリュングベルと恋仲らしく。先に来ていたイアハートから聞いていた通りの熱々っぷりだった。
そしてもう一組。
「クラトスは俺と既に何百年といてくれてるしな。もはや俺が居なきゃ生きてけない。そうだろ?」
「…お前はどうしていつも自信満々なのだ…」
呆れたように、諦めたようにしかし否定もせずにため息をついたのは、クラトスと瓜二つの青年。
しかし肩の服は身につけておらず、晒された肩や、耳についたピアスなどがクラトスとは違う。彼もまたテレジアという世界の人間であるらしい。
そしてこちらもトキと恋仲らしい。こちらの方は普段から見せつける事こそ無いものの、醸し出す空気はいつもなんとなく艶やかだ。…なんとなくだが。
「リュングベルは食べてる姿も可愛いんだよ。ヴェイグが幸せそうに食べてるのを見ると俺まで幸せになれる」
「…俺はアウリオンを食べると幸せになるがな」
「トキ!」
「なに怒ってんだよ」
観客が呆れたか飽きたかして減ってきた頃。二人の言い合いもヒートアップしてきた。ルーチェは己とリュングベルの世界へと入り込み、トキの発言が危うい方向へと進んでいく。
こうなったらリュングベルは流されていくだけであり、アウリオンは諦めて聞き流すだけだ。
つまり、外部が止めねばならない。
「ジャッチメント」
クラトスは喜んでその役目を請け負うと、裁きの光が降り注いだ。
end
あんまり恋人自慢してないかもしれない…
こんなものでよかったら貰ってやってください!!
リクエストありがとうございました!