短編
□悪意は無い
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珍しく騒ぎもなく、穏やかな朝を2人でのんびりと過ごしていた時だった。
「ってぇ」
「?」
ヒスイが小さく上げた悲鳴に、ブレイズが振り返る。俯いたヒスイはぐしぐしと目を擦ってはぱちぱちと瞬きを繰り返していた。
「…どうした?っていうか目、赤くなってる」
擦りすぎて赤くなってしまった目元を優しく撫でるブレイズにヒスイが罰が悪そうに顔をしかめる。
「なんか入ったんだよ」
さらに擦ろうとすれば、ブレイズの手がやんわりとそれを阻止する。それからヒスイの頬に手を当てると、彼の瞳を覗き込んだ。
「ん…あーなんか入ってるな」
「いてぇ…」
「擦っちゃダメだぞ。目が傷つく」
痛みからボロボロと目の端から流れる涙をブレイズが拭う。彼にしては珍しく真面目な顔をして、愛しい人を苦しめる諸悪の根源をこらしめる方法を考える。
「涙と一緒に出てくれればいいんだけどな」
「もういいから、手ぇ離せ」
いつまでも頬に手を置かれた状態がいい加減に恥ずかしくなってきたらしいヒスイが顔を反らそうとするが、思いの外がっちり支えられているらしいそれは動かなかった。
「おい、ブレイズ」
「ちょっと待って。なんか取る方法思い出しそうだから」
うんうんと唸りだしたブレイズにヒスイはため息をつく。考えるのは構わないがせめてこの他人が見たら、これからキスします、と捉えられそうな姿勢をどうにかしてくれないものか。
そんなヒスイの気持ちを知ることのないブレイズは、何かを思い出しそうだった。ちょっと前に偶然出会った場面。目にゴミが入ったらしいスパーダはリカルドに何かをされて取れていた。
…なんだったか。
「…ブレイズ」
呼ばれて、飛んでいた思考を目の前のヒスイに戻す。文句を言う彼の口から覗く赤に、あ、と声を上げた。
「な、なんだよ」
「思い出した」
「お、マジか?じゃあ……っ!?」
頼む、と言おうとした瞬間に目に這ったベロリという新しい感覚にヒスイが固まる。
「な、なななな…っ!?」
「ん、取れた」
目の前でべっと舌を出すブレイズに、目をなめられたのだと理解したヒスイはかぁっと顔を赤くする。
「ヒスイ?…ヒス」
「この…変態野郎が!!」
精神的に来る言葉と共に、高らかに響いた打撃音にブレイズは、そういえばリカルドもスパーダに斬りかかられてたなぁ、と今さらながらに思い出したのだった。
end
さりげなくリカスパ主張
リカルドは悪意あり、ブレイズは悪意なし