短編

□愛情表現
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別に愛されてない、なんて感じたことなんてなかった。むしろ彼のそういう言動は愛情の裏返しだと思っていたし。そう思ってしまえばむしろ嬉しいものだった。(決してマゾなわけではない)


「…ヒスイ?」

「るせぇ」


だからこそヒスイに押し倒されて抱き締められているこの状況と、さっき言われた言葉はブレイズには衝撃的だった。


時は遡ること一時間前


ヒスイはいつものようにくだらない話を仲間たちとしていた。しかし、それはいつしかヒスイとブレイズの関係についてに変わっていったのだった。


「ブレイズとは仲良くやってんのか?」

「あぁ?なんであいつの話になるんだよ」

「いいじゃん減るもんじゃないでしょ〜?ね、どうなの?」


スパーダが多少にやつきながらヒスイに尋ね、興味深そうにマオも話に乗る。少し嫌そうな顔をしながらヒスイがぶっきらぼうに「いつも通りだ」と答えるとマオもスパーダもつまらなそうな顔をしてみせた。


「ふーん…でもブレイズって本当にヒスイの事が好きだよね」

「でもよ、お前って本当にあいつのこと好きなのか?」

「…は?」

「あー確かに。よくぶっ飛ばされてるよね!」

「あれでもめげないあいつには尊敬の意を示すぜ」

そんな言葉がヒスイの耳に入るも、それは意味をなさず、ただ通り抜けていった。

ガタッと音を立てて立ち上がったヒスイに2人の肩がビクリと揺れた。


「ヒ、ヒスイ?」

「どしたよ」


心配する2人をよそに、ヒスイは食堂を飛び出して行ったのだった。



というのが一時間前のことである。


「ヒースイ」


わけのわからないまま抱き締められているわけにもいかないので(幸せだけど)優しく背中を叩くと、ヒスイがポツリと爆弾を落とした。


「俺は…テメェのことを、ちゃんと……愛してる」

「……へ?」

「確かにあれだ…俺は手がすぐでるけどよ」

「ヒスイ」

「ンだよ…」

「誰かになんか言われた?」


そこでヒスイがはっと気づいてブレイズの顔をそっと盗み見た。少しだけ困ったような顔をしていたさっきまでの表情とは一変。笑っているけど目が笑っていない。


「ち、ちげぇ…ただ、俺は」

「俺はヒスイの手が出る、とかは照れ隠しだって知ってるし、ちゃんと俺の事好きでいてくれてるって知ってる。」

「おまっ」

「ふと瞬間に俺の姿を探してくれてるのも知ってるし、戦闘の時、俺をちょっと贔屓してくれてるのも知ってる。俺が他の人とクエストに行くと、ちょっとだけ拗ねてるのも「だああああああいい加減にしやがれ!」ブフォアッ!」


延々と語り出したブレイズに最初のほうは驚いていたヒスイだったが、段々赤くなっていく顔と、震え出した肩がついに爆発した。


「な、殴ることないだろ…」

「黙りやがれ!恥ずかしいことペラペラ喋りやがって!」


真っ赤になってブレイズを指差すヒスイにブレイズはにへらっと笑った。


「ヒスイのことは俺がちゃんとわかってるからさ、あんまり気にしなくていいよ?」

「…っ!よくそんな恥ずかしいことが言えるなお前…!」

「先に愛してるって言ったのはヒスイだろ?…嬉しかったけど」

「…う」

「たまにでいいからさ、無理はしないでよ」

「…あぁ」


返事をしたヒスイにブレイズは満足そうに笑うと、強く彼を抱きしめた。

この日から少しだけ素直になったヒスイが見れたとか見れなかったとか。




(行っちゃったねヒスイ)

(まぁ、あいつもブレイズのこと大好きってことだな)



end
ブレイズは止めなければ三時間は止まらない

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