短編
□ただいま
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約束1つの続き
昼下がりのバンエルティア号。賑やかな声が少しだけ聞こえる、暖かな陽気が窓から射し込む部屋で抱き締め合う男が2人。
「あー…痛い」
すりすりと赤くなった頬を撫でるブレイズは台詞とは違い嬉しそうに顔を緩めていた。
「気持ち悪いぞお前…」
そう言ったヒスイもまた言葉自体とは違い優しい声音で、ブレイズの肩に顔を埋めた。
「しょうがないだろ…これでにやけなかったら俺は尊敬するよ」
「うるせぇ」
こうなる約一時間前。
全ての戦いを終え、ラザリスとまた迎えに行くという約束を交わしたディセンダー達が世界樹から帰ってきたのだ。
降り立ったリヒトとブレイズにカノンノが駆け寄り涙を浮かべ、 リヒトが慌てて彼女を抱き締めているのをブレイズは微笑ましく見守っていた。
そしてアンジュに説教を受けた2人は(リヒトが太ったかなんて聞くからだ)バンエルティア号の中で、仲間達から歓迎を受けた。
そして歓迎を受ける中に見えたヒスイにブレイズはニヤリと笑って頬を指差した。
「来いよ」
周りが頭にクエスチョンマークを浮かべる中、拳を固く握り締めたヒスイは、全力でブレイズの頬を殴った。それはもう凄い音をさせて。
騒然とした中で、殴られた本人はよろけながらもニカッと笑いヒスイをそのまま抱き締めた。
「…ただいまヒスイ」
「…おっせぇよバカブレイズ…!!」
大人しく腕の中に納まるヒスイに周りの仲間達が苦笑いをしながら散っていく。
ヒスイがそれに気付きブレイズをもう一度ぶん殴って今に至る。
口を開けば、悪態をつくヒスイだが、けして抱き締められた状態から逃れようとしなかった。
「明日になったらどっか行かない?」
「あ?今から行きゃいいだろ」
「今はこうしてたいんだよ」
「……明日、さっさと起きろよ」
「了解」
それから何を言うでもするでもなく、まるでいなかった時を埋めるようにただ過ごす2人を空気を呼んだ仲間達が訪ねることはなかった。
end
帰還後は少しだけデレ成分が増えればいいなあと思うのです。