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□マフラー
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あみあみあみあみ
ベッドの上に座り無言で行われているその作業を、横になり、上体だけ起こしながらぼーっと見つめる。ふわふわした毛糸が連なって一本の棒に並びきると、今度はもう一本へと移されていく。
器用だなぁと遊良は感心してその手で触れてみた。ふわふわだと思っていたが、どちらかというと、もこもこだなぁ、なんてどうでもいいことを考える。
「マスター、引っ張っちゃ駄目ですよ?」
「…あぁ、ごめん」
正座をしながらそれを編むカイトはまるで子供のために編み物をする母親の様だ。実際は母親というより恋人で、子供のためではなく、恋人のために編み物をしている訳だが。
「上手くなったね」
長くなったそれの最初の方は少しだけ隙間が出来ている。それが進むにつれて、きっちりと隙間無く編まれている。
「だんだん慣れて来ましたから!!」
誇らしげに笑うカイトにつられて遊良も笑う。紺色をしたそのマフラーは俺にくれるらしい。一緒につけて歩きましょうね!なんて意気込んでいたカイトがそれを編み始めて約一週間。そろそろ丁度いい長さになってきたようだ。
「もうすぐ完成?」
「はい。あとちょっとですよ」
首に巻くには十分のそれを引っ張らないように手にとりながら、ぼんやりと考える。
「もうちょっと長くならない?」
「なりますけど…長い方が好きですか?」
「あぁ、いや…」
不思議そうに首を傾げるカイトがぼやける。あぁ眠いなぁなんて考えながら。
「2人で巻きたいなぁ…なんて、思って……」
そう言えば、カイトが顔を真っ赤にしたのが、閉じそうな視界の端で見えたような気がした。
end