グラニデ
□本なんかより
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部屋の中で聞こえるのは小さな息の音と、ページを捲るパラリという音だけ。
たまにきこえるゴウンゴウンという機会音がやけに響いて感じられる。
「……」
目の前でベッドの上に座り読書に没頭するヴェイグに、向かいのベッドに寝転ぶユーリは小さくため息をついた。
仮にも恋人である自分が部屋に訪ねて来たというのにこのスルーっぷりである。部屋に来て交わした会話といえば。
「マオとユージーンは?」
「修行に出ている」
「…しばらく帰って来ねぇの?」
「あぁ」
こんなもんである。
仮にも恋人である自分が(大事なので二度言うが)、1人の時間に、しばらく部屋の仲間が帰って来ないのかと、下心を覗かせたのに。この鈍感な恋人はちっとも気付きやしなかった。まぁそんな所も好きなのでお手上げなのだが。
ただ、ベッドで寝ていても暇なので、行動に移すことにした。
「?…ユーリ?」
「ん?」
「いや、その」
「あぁ、俺の事は気にすんな」
「え、ちょ」
本を読む手を、そっと掴み本を閉じさせる(ちゃんとしおりもはさんだので、後で怒られることはない)そして本をベッド脇に置き、呆然としたままのヴェイグを笑顔でベッドへと押し倒した。
「ユーリ…!!」
「真っ赤な顔して睨んでも怖くねぇよ」
ようやく我に返ったらしい彼の睨む視線を軽く流しながら、その首筋に顔を埋めた。途端にびくりとして抵抗を止めたヴェイグに小さく笑う。
「なぁヴェイグ」
「……っ!」
「…俺にも構ってくれよ」
わざと低く甘く囁いた声に、ヴェイグの耳が真っ赤に染まったのが見えて、ユーリは満足げに笑った。
本なんかより
(ちょっとぉーー!!ヴェイグから離れてよ!!)
(ちっ手を出すのが遅かったか)
(マオに…見られた…!!)
end