グラニデ
□おそろい
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犬が散歩中に人とすれ違う時。その人に近寄っていくか、いかないかはキレイに分かれる。犬が好きな人には近づくし、嫌いだという人には決して近づかない。動物には人の心が分かるのだ(以上フィリアに貸してもらった本より)
そんなことを思い出しながら、ルーチェは甲板にてカモメに取り囲まれた愛しい銀髪を眺めた。
「……」
別に餌を持っているわけでもない彼は頭や肩、腕に乗られて多少困惑しているようだが、表情はとても穏やかだ。
穏やかといっても普通の人が見たら、普段となんら変わらなく見えるのだろうが。
「ヴェイグって動物になつかれるよね」
「…そうか?」
「うん。だってこないだの猫の捜索とかヴェイグのおかげだしね」
「…あれか」
猫捜索の依頼では、その体質が大いに役立った。警戒して毛を逆立てる猫は少しでも近づけば、引っ掻いてくるか、逃げるか。そんな猫を手招きだけで捕まえたヴェイグには、飼い主さえも拍手を送った。
「動物って優しい人がわかるんだって」
つまりヴェイグはとっても優しいんだよね、知ってるけど。と自分のことのように嬉しそうに笑うルーチェにヴェイグは目を瞬く。
それから少しだけ頬を染めて、視線を反らした。このまま無言のままだろうか、と思う程の沈黙の後、
「…なら、お前も動物に好かれるんだろうな」
…優しいから、と予想外にも返された言葉に今度はルーチェが目をぱちくりとさせるはめになった。
「……」
「……なんだ」
無言で見つめ続けたのがいけなかったのかヴェイグが先程より赤くなりながら視線をよこす。
「嬉しくて」
「…」
「言葉が出てこなかったから」
「…そうか」
「ヴェイグとおそろい」
また嬉しそうに笑うルーチェにヴェイグも頬を弛めた。
(甲板にでれねぇ……)
end
天然たちの被害者はアッシュさん