グラニデ

□オルゴール
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「スクレさん遅いわね〜」

「ユーリ呼んできてくれます?」


いつもなら直ぐに食堂にくるスクレがなかなか来ない。エステルが心配そうに俺に言うので、軽く返事をして立ち上がった。

遅れるくらい特に心配することはないと思ったが、せっかくの飯が冷めてしまうのはもったいない。足早に部屋に向かった。


「スクレ」


彼女の部屋の前まで来て呼び掛けるも、返答は無し。不審に思ってノックをしてみたがやはり返答はなかった。


「おい、スクレ。入るぞ」


寝ているのかもしれないと考えつつ、一応断りはいれてそっと扉を開く。スクレは予想通り寝ていたが、ベッドではなく机に突っ伏していたので驚く。

それと同時に其処から優しいメロディーが流れているのに気がつき、起こさないように机を覗き込む。


「…オルゴール?」


優しげな音を奏でるそれは先程ネジを巻かれたばかりなのか、スムーズに音を紡ぎ出していた。


「…えらく幸せそうな顔だな」


きっとこれを眺めていたら寝てしまったんだろう。その光景がすぐに想像できて、ぷっと笑う。

しかしスクレにこれをあげたであろう、あの爽やかな男を思いだす。これが奏でる音の優しさはまるで彼のようで、複雑な気持ちになる。


「スクレ」


だんだんネジが切れてきたらしいそれが、ぽんぽんと一つの音になっていく。不協和音にも似たそれは何故か心を乱した。早くスクレに起きて欲しくて肩を軽く揺する。


「起きろってスクレ」

「んん…あ、れユーリ?」


おはよう、なんてスクレが呑気に目を擦る頃には、もうオルゴールは止まってしまっていた。


「おはようさん…早く食堂に行かねぇとリッドあたりに食べられちまうぜ?」

「え!?もうそんな時間!?た、食べちゃダメだよー!!早く行こうユーリ!!起こしてくれてありがとう!!」


言いたいことは全部言って、勢いよく飛び出していったスクレに苦笑いをしながら俺も部屋を出る。その時最後の力を振り絞ったようにオルゴールがぽん、と音を鳴らした。






(まるでゴングの音みたい)




end

オルゴールか急に鳴って怖かったよ記念に

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