捧げ物
□桜鳥 湊様へ
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暗闇の中で微かに動いた帯人は床へと倒れていた
開けた窓から入る月の光に照らされた床には小さな水溜まりができている
否
水溜まり、ではない
床へと溜まる液体の色は赤
「マスター」
マスターマスターマスターマスターマスター…
狂ったように一つの単語を繰り返す帯人の手には自らの血で染まったアイスピックが握られていて
彼の腕に巻かれた包帯は綺麗な白から赤へと変わっていた
傷つければ傷つけるほどそこから溢れる血を、帯人はペロリと舐めとり笑う
口に広がる鉄の味に安堵すら覚えて、ひたすらに己に凶器を突き刺す
「帯人」
急に聞こえた声に顔を上げればそこには待ち望んだ主人がいて
「…随分、楽しそうだな」
「マスター……っ!!」
怒りを含んだ声に謝ろうとすれば、腹に蹴りが飛んできて壁へと叩きつけられた
「…はっ…」
息が苦しくて下を向いていた帯人に彼はゆっくりと近づきしゃがむ
「…そんなに痛め付けるのが好きならさ」
髪を掴まれ強引に上を向かされた先には笑顔の彼
目は、笑ってなんていないけど
「俺が、痛め付けてあげるから」
嬉しいだろ?と言った彼に帯人がニッコリと笑った
(お願いだから俺だけを見て)(その為なら俺は)
end
あとがき