捧げ物

□彬様へ
1ページ/2ページ



「マスターに問題です」


不意にそんなことをいった帯人に俺は本から意識を離し、彼に向けた

そこには珍しく笑った彼がいた…といっても本当に小さくなんだけど


「何?」


本を机の上に置くと帯人が俺の隣へと座りこちらを覗きこむ


「俺の、一番好きな食べ物は?」

「…ブルーベリー」


直ぐに答えてみせると帯人が嬉しそうに笑う

質問の意図が読めず、多少疑問は残るが嬉しそうな彼に水をさすようなことはしたくない

素直に答えることにしよう


「昨日俺がした事は?」

「自傷行為」


そういわれ昨日の傷を思い出して彼の腕を掴む

包帯は巻き直したから大丈夫だがやはり心配だ


「痛くない?」

「…ほとんど」

「良かった」


腕を掴んだまま帯人を見ればやっぱりいつもよりも楽しそうな顔

…今、少しだけ「カイトが嬉しそうだと俺も嬉しい」と言っていた兄貴の気持ちがわかったような気がする

俺にも人並みの感性はあるらしい


「…マスター今、俺以外のこと考えました?」

「…間接的には…お前のこと、だと思うよ」


そうですか、と帯人が安心したという顔を浮かべる


「じゃあ最後の問題です」

「あぁ」

「俺の一番好きな人は誰でしょうか」


期待に満ちたその表情と質問の内容に一瞬呆気にとられて目を見開く

しかしすぐに正気に戻ると自分でもわかるくらいに意地の悪い笑みを浮かべた


「俺?」


そう答えると帯人は、正解です、と満足そうに笑った






end
→あとがき
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ