兄弟パロ
□興味対象
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「さて、もう逃げ場はねぇぜ?」
狭い通路にて自分を囲む輩に、ハザマはため息をつくと共に少し前の行動を呪った。
今日もいつも通りに仕事をこなし終えると、既に日は傾きそうになっており、ハザマは急いで帰路につこうとしたのだが。
「…ハザマ」
「おや、レリウス大佐。どうしました?」
「いや…やけに帰りが早いと思ってな」
「あぁ、カズマが風邪をひきましてね。」
後ろからした声に振り返るといたのは、昔からの知り合いのレリウスであった。いつもは夜遅くまでいるハザマの珍しく急いだ姿に声を掛けたのだ。
嘘をつく必要も無いので真実を伝えれば、彼は顎に手を当て少し考えるような仕草を見せる。それに首を傾げれば彼は珍しく口角が上がった。
「診てや「遠慮します」
下心しか感じなかったハザマの容赦ない切り捨てに、表情の見えない仮面の奥が心なしか楽しげに揺れた気がする。
「…?楽しそうですね」
「…そうか。そう見えるか」
ハザマとしても、久しぶりにレリウスと話せていることは、嬉しいことではある。だからなのかついつい話は弾み、彼と別れる頃には日は完全に沈んでしまっていた。そして冒頭に戻る。
「統制機構だかなんだかしらねぇが不愉快なんだよ!」
(カズマ…一応薬とか近くに置いときましたけど)
「自分達は安全に暮らしやがって!!」
(熱が下がっていなければ、明日は休みましょう)
「っ!おい!!聞いてんのか!!」
「え?あぁ、すいません。まったく聞いていませんでした」
なかなかの迫力の彼らの声で、飛びかけていた思考が帰ってくる。正直に聞いていなかったことを言えば、頭に血が昇っているらしい彼らのリーダーらしき人物はさらに顔を真っ赤にし合図を出す。
「やれ!!お前ら!」
「おっと」
突っ込むように力任せに出された斬撃を避けることなど容易い。ひらりと避けて見せると、次々と襲いかかってきた。
しかし連携プレイも何もない彼らの攻撃はハザマの服すら掠めることは出来ない。
「くそっちょこまかと!」
やろうと思えば、ここにいる全員倒せなくもないが、面倒である。どうしたものか、と考えていると一人の男が飛び道具を取り出しハザマ目掛けて投げた。
「…あらら。当たっちゃいましたか」
避けたと思ったが、それはハザマの頬を掠めた。頬を滴が伝うのを感じてハザマはため息をつく。
「今だ!やれ!!」
好機と思ったらしい、男たちは一斉にハザマに突っ込む。
「まったくもう…」
面倒だ。なるべく穏便にいきたかったが面倒になった。ウロボロスを呼ぶべく腕を動かした所で、男たちが吹き飛んだ。
「……は?」
「よぉハザマちゃん。駄目だぜ?ゴミなんかと遊んでんな」
「テルミさん」
「帰りが遅いから来てみれば…あ?…ハザマちゃん」
「は、はい」
吹き飛ばした犯人であろうテルミは不機嫌そうに、転がった男たちを眺めるとハザマへと視線を移す。とたんにピタリと停止したテルミから出ているのは紛れもない殺気。返事をした声が少し震えた。
「それ何」
「それ?…あぁ。避けれなかったんですよ。情けない」
言い終わってテルミの方を見れなかった。殺気がヤバい。冷や汗をかくハザマを置いてテルミはうめき声を上げる男たちに近づくと、蹴りあげた。それはもう容赦無く。
「ぐあっ」
「おいおいおい、お前ら何してくれてんだよ、あぁ?ハザマちゃんの顔に傷がついちゃってんじゃねーか」
「ひっ…!や、止め…」
「止め?止めろって?ヒヒッ、ちょーウケる。やめるわけねーだろうが!」
テルミの容赦の無い、無さすぎる攻撃に悲鳴すら聞こえなくなってきた。
しかし当の本人であるハザマの興味の対象は既に男たちでは無くなっていた。(最初からだったかもしれない)
「カズマ大丈夫ですかねぇ…」
小さな呟きは、この場には酷く不釣り合いだった。
end