LUCKY DOG1
□バカ依存症
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――ジャンが倒れた。と、険しい表情を浮かべた幹部筆頭ベルナルドの口から俺ら幹部へと告げられた。
「おいおい、そりゃマジかよ……」
「ジャン、さん…が……」
「本当だ、今病院に検査を受けに行ってるところだ」
俺は今日は寝る間を惜しみ明け方まで仕事をしていて、朝ホテルに帰って来た途端にドカンと一発衝撃を加えさせられた。
皆、信じられないような目をして疑った。それも当たり前だ、急に…ジャンが倒れただなんて…。ついこの間まであんなにアホみたいにピンピンしてたのによ。何があったってんだまったく……。
そして今日は1日念のためにホテルで休んでおくのとこと。
俺はそのあといつもの様に自分のシマに顔を出し、いつものようにシノギに精を費やしていた。でもジャンのコトで頭が一杯で仕事に気が全く入らなかった。
ここ毎日、多忙な日々が続いていて肉体が少々悲鳴を上げている。そして最終兵器の爆ぜ弾が俺を襲い、精神的までにもダメにした。
こっちがぶっ倒れそうだった。
「……ファック………」
ここでスラングり吐いても仕方ないけど吐かずにはいられないほどムカムカしていた。
仕事終わったら、様子見に行こう……。
―…
「おいジャン!!―ジャ…」
「お〜イヴァン。もっと静かにドア開けろ〜」
最上階のジャンの部屋に向かう廊下を突っ走り、ドアを勢いよく蹴飛ばす。そしたらジャンは何をあろうことか寝てなんかいずにベッドの端に腰掛け、本なんか読んでいやがった。
「おまっ……大丈夫…、なのかよ……」
「…何が……あ、ああ…だいぶ良くなったぜ」
よかった、いつものジャンだ。顔色も良さそう、元気そうで一先ず安心する。
「ったく……心配して来てみりゃあピンピンしてんじゃねぇかよ!」
「ごめんねぇ〜イヴァンちゃぁん」
「うっせぇ!で、なんで倒れたんだよ」
「あぁ……実は……」
顔がいきなり深刻な表情になった。
え、ちょ、おい!?そんなにヤバい訳らしなのかよ!?
「なっ、……そんなに…ヤバいのか…!?」
「グスン、実は………病に……」
マジかよおい!
「な……何なんだよ…それ」
「今すぐキスしてくれないと死んじゃうぞ病」
……………。
「―――………………。
ハァァァァァ!?なんじゃそりゃ!!バカにしてんのかおめえはよお!?アァ!?」
「イヴァン、今日は何月何日、何の日だ?」
俺のスラングあっさり無視。
な、何月何日…だって?
今日は……4月1日……だよな…。4月1日……、って…。
ま、まさか……。
「エ…エイプリルフール!?」
「ピ〜ンポ〜ン!イヴァン君を湯けむり温泉の旅へご招待〜」
エイプリルフール…って嘘ついていい日だよなぁ…。
なんか思いっきり嫌な予感がしてきた。
「おっ、おま!!!全部嘘なのか!?俺を騙しやがったのか!?」
「その通ーり!いやぁ見事に引っ掛かってくれたわねぇん」
「――――!!!!!!
てんめぇ〜〜〜。嘘だぁぁぁ〜〜!?このファックスアス野郎がぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
「わっ、ちょ!やめ、イヴァン!!!痛てぇ!」
「こんの野郎!!!俺がどんだけ心配したと思ってんだ!!!」
「え、あれ、心配してくれたのけ?」
「あったりめぇだろこのバカ!!!いっ、いきなり…倒れたとか…言うから…」
「……やっぱり…俺の思った通りだった」
「…何が…だよ」
「最近さ、忙しくてまともに会えてなかったじゃん?だからさ、あんなこと言ったら真っ先に俺んとこに来てくれるんじゃないかなぁと思ってさ……」
「な、なんだよそれ……」
「あー早い話が………。
あー…よーきゅーふまん?」
「…ふっ。ばぁか…結局のところ…俺に飢えてんじゃねぇのか、犬っころ」
いや、俺も…人のこと言うねぇか。俺もずっとお前に飢えていた。
「ふふ。そうだよ、バーカイヴァン」
顔を近付け、どちらともなくキスをした。今までの時間を一気に詰めるような長い長いキス。
それから、俺みたいな野郎がするものとは思えないほどの手際で、女を扱うように優しく抱いてやった。
お互い熱を感じ合って、堕ちて、堕ちて―…。もう何もかもわからなくなるほどとろとろに溶け合ったのだった。
こいつの匂いも体温もすっげぇ心地よくて…こいつの全部が愛しいと思った。
こんな情緒に巡り合ったのは初めてだ。
これを…幸せっていうのかな。
情事後も朝までずっと2人で抱き合っていた。俺は勿論…熟睡していただろう。こいつほんとに安らぎ物質とかなんとかが出てるんじゃねぇだろうなとか思いながら…こいつの寝顔を眺めていた。