ドラゴンボール

□どん底に堕ちるなら
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無情にも、ふとこんな感覚に侵されることってそうあるものだろうか。






この胸が苦しくなるような異様な感情はなんだろう。もしかして僕は取り返しのつかないことを秘めてしまったんだろうか。



気が付いたらあなたに恋い焦がれている自分がいたんだ。



これは家族に対する愛じゃないのかと何度も自分に言い付けた。男性に、ましてや実の父親にこんな感情を抱くなんて前代未聞なことだ。自分自身で認識するのにはかなりの時間がかかってしまったが。こんな自分に少しだけ嫌悪感を感じつつ、自分を咎め続けた。



恋愛感情を抱いたところで何が起きるわけじゃないけど、でも一度踏み入れてしまったらもう元のようには戻れない。ましてや手を出してしまうなどももう元の関係にも戻れないだろう。

絶対に報われはしない。
ハナから結果は絶望的なことだとわかっている。
でもだからと言ってこのあふれ出た気持ちを刺し押さえることはできるだろうか。強いて言えばそれはちょっとした拷問だ。この感情を抱いたことに卑しいとは思わなかったし、悔いもしなかった。況してや人間の本能とも言うべきこの感情に疑問を抱くこともなかった。

この心のうちにある言葉を伝えたらあなたはどんなことばを返すだろう。
こんな僕をあなたは恐れるだろうか、嫌うだろうか、咎めるだろうか。



それでも僕は………








「どうした、悟飯?顔色悪いぞ?」

ふと我に返り、俯いていた頭を上げると心配そうに顔を覗き込む愛しい父の顔があった。
学会のレポートを書いているうちに悶々と考え込んでいたせいかいつもより顔色が冴えないらしい。

「あ…すみません。なんでも…ないです」

なんでもないことなんて実はなくて。こんなぐるぐるとした思考にホントは気が追い付いていけないのだ。自分で言うのも何だが、学者と言う学問を学ぶ者がこんなこと言うぐらいだから結構相当なものなんだと思う。

何もかもすべてめちゃくちゃにしてしまいたい自分とそれを懸命に抑制しようとする自分がいる。




「そっか、無理すんなよ」


満面の笑みで優しく頭を撫でてくれる父。

いずれ自分はこの慈しい笑顔を壊すことになるのだろうか……。この人のこれからの人生を大きく変えてしまうことになるのだろうか。



愛しい………。
ただ愛しくて………。



禁忌を犯してまでも貴方を手に入れたいと心底思った。



どん底まで堕ちて
もう何もかも失って
地獄の底で
背徳に陥ればいいんだ。




もう後戻りはいらない。







「貴方が………好きです」





嗚呼、あなたから愛を得るスベが欲しい。

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