ドラゴンボール

□愛するが故
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俺は最近、『愛する』っていうのがよくわからなくなる。
異性を恋しく思う、が元々の意味らしいんだけれども、俺たちは男同士。そもそも俺たちがしていることは恋愛対象なのかが気になるところだ。
俺たちは恋愛=セックスするとしか捉えてないんじゃないのかって…ふとそう思った。
性行為を求めるお前も俺も、それは単なるフラストレーションではないのか。そこに愛があるのかが問題だ。セックスなんて愛がなくても簡単に出来る。
俺たちがやっていることに意味はあるのか?
何を指しているんだ?

なぁ、お前には答えられるか?

悟天……。





「愛は世界を救うらしいよ」

ベッドで寝転がりながらまたいきなり変なことを言い出した。今日はいつにもましてよくわからないことを。

「………は?」

「だから僕たちちゃんと愛し合わなきゃ。」


……いったいコイツは何を言っているのか………。

24時間テレビでもあるまいし………。
愛があれば世界を救えるだと?どの偉い学習が言ったそんなこと。


「くっだらない……。」

「な、なんでよ!」


理由なんてない。ただくだらないだけだ。
そんなことできたらだれも苦労はしないさ。
力があれば何だって救える。愛がなくても現に俺たち世界を救ったじゃないか。

「なんでも」

「だってお父さんが「地球の未来はお前たちの腕にかかってるんだぞ」って言ってたじゃん」

「お前それ道筋おかしいぞ。それとこれとは話が全く別だろ。」

「よく似たもんじゃん」


いや、違うから。

だから愛し合えって言うのか?世界を救うために?



どうやって?

どうして?


まったく……。
コイツのこういうところが天然なんだよなぁ……。
何回この天然っぷりに振り回されてきたことか。



はぁ………なんか頭痛くなってきた。

「もう帰る。」

高級そうなコートを羽織り、窓に向かう。
もう今はちゃんと玄関から帰るという気分じゃない。


「……………」


「止めないのか?」


「どうして?止めて欲しいの?」



「……………………」


こいつはいつでも俺の心をズタズタにする。
俺ができないってわかってんに。
まるで俺の心を見透かしているように意表をついてくる。
この目に逆らえない。

「おいで、トランクス」

悟天はベッドから起き上がり両手を広げ、なんとも言えない薄い笑顔でそう言った。

トランクスは少し迷ったが帰るのをやめ、悟天の腕の中へと納まった。
あんな顔されたら断れない。


「「…………………」」


しばらく沈黙が続く。

先に口を開いたのは悟天だった。


「僕ね、愛することって人間の本能だと思うんだ」


「…さっきと言ったことが色々と矛盾してるぞ」


「ごめん…さっきのはただの口実。」


「おい。」


「人間はね、愛がなくっちゃ生きられないの。」


「………そうかな?」


「そうだよ。君だって家族に愛されて、友達にも愛されて、そして…僕に愛されている。こんな幸せはないだろう?
愛がなければ、今の君はここにはいないと思うよ?」


「それはわかってるけど……俺はその愛がよくわからないんだよ。
形なきものなんて……感じとれない。俺そんな器用じゃねぇし。」


「う〜ん。
ってか君ただ愛に鈍すぎるだけなんじゃないかなぁ…?」


「………かもしれないな。
でも意識さえしてないし、わかろうともしないから。」


「はぁ…無関心だねぇ……。」


「じゃあお前は俺を愛してるって言えんの?」


「うーん……そう言われると…答えはノーだね」


「どうして?」


「うん。愛してると言っちゃちゃんと愛してるよ。でも『愛してる』って言葉自体が結構重いでしょ?
僕はただ『好き』を通り越して、『愛してる』を追い越して、無条件に君が『いとしい』と思ってるんだよ。言葉じゃなくてもちゃんと伝わることだってあるんだよ。そして君がいかにそれを受けとることが出来るか。それに気づくことが出来るかなの。それを愛と呼ぶのは君次第だよ。

これだけはちゃんと言える。
トランクスは…僕のかけがえのない恋人だよ。
だからもうそんなに……トランクス?」

俺はもう耐えられず、話の途中にもかかわらず悟天を抱き締めた。

もういいよ。
わかったよ、お前が俺を思う気持ち。
これ以上言われたら俺がどんどん情けなくなってしまう。
自分が許せないんだ。
こんなにも俺のこと考えてくれて…。それなのに俺は…何もしてやれなくて。
…何も感じてやれなくて。
ただただ…途方に彷徨うばかりで………。
答えなんかなかったと思ってたのに……。

俺はこんなにもコイツを愛しく思っていたのか?
何故今まで言えなかった。大切な言葉を。
感情でさえあらわせずにいた……。
ホント自分が情けない。


結局は愛に貪欲だった。


「どうしたの?」


「悟天…………」


「ん?」


「ごめん…ありがとう……。」


そう言って俺は悟天をもっと強く抱き締めた。少々強くてもコイツは壊れない。
わかって欲しかった。
俺も好きって。
愛してるって。

「うん……。

ゆっくりでいいからね。
僕はいつでも待ってるから。」


そう言って、悟天は優しく触れるだけのキスをした。


ああ……なんて暖かい。



こんな感情初めてだ。


こんな俺でもお前は俺を、宝物を扱うように大切に大切にしてくれる。これ以上嬉しいことってない。

さっき『愛は世界を救う』と言ったな。
そうだよ、その通りだ。
俺はお前の愛なしじゃ生きられないんだ。
世界が敵に回っても、お前だけがいてくれれば生きていける。
お前がいてくれて、俺の世界は救われた。お前の愛で、俺は救われたと思うよ。



自分が情けなくて。
辛くて歯痒くて。
どこか切なくて。
でも…嬉しくて。
涙腺がゆるんで。
涙が止まらなくて。



それでも、俺は言いたくて。



俺は喉に詰まっていた言葉を、今まで言えなかった一言を泣きながら何度も何度も悟天に告げた。

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