LUCKY DOG1
□桃色流星群
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「でわ以上で会合を終了致します―…」
会合相手のお偉いさん方が次々と帰っていった。アレッサンドロ親父もベルナルドに一声告げ、彼らに続いて部屋を後にした。
「お疲れ、みんな。もう楽にしていいよ」
ベルナルドの一声で、俺たちは腹の底に溜まっていた重い息を吐いた。やっとあんな堅苦しい空気から逃れられたぜ…。
「ああぁ〜、死ぬぅーー!!!」
俺は腕と足をピーンと伸ばしに寝っころがった。
ううぁ、足の裏がじんじんする。
「ファーック!!!ファックファーック!!!何でこの俺がセイザなんか…う……足が…うおあぁ……!!」
罵声を上げながら立ち上がったイヴァンは力なくまたへなへなと畳の上に座り込んだ。俺も今立ったら…いや、この寝転がった状態から1mmでも身体を動かしたらヤバイ。
「あぁ〜じんじんする!」
「俺も、さすがにこれは参るぜ」
お、さすがのルキーノもこの体勢には絶えられないか。
「ジュリオとベルナルドは大丈夫なのけ?」
「あ、俺は…大丈夫、です」
「俺も平気だよ、年中机にへばりついてるから痺れにも慣れたんだろうね」
「ワーオ、僕ちゃん感心しちゃう」
まぁこんなのに感心してどうにかなるってもんじゃないけどな。
忍耐鍛えてあんなぁ2人とも。
ボンジョルノ〜…じゃない、コンニチハ〜日本の麗しきシニョーラ達よ。俺たちは今、ハワイから約6000km、太平洋の西端に位置している日本国に絶賛滞在中だ。日本の流通会社との大事な会合や証券取引などがあるとかでCR:5の幹部5人と、アレッサンドロ親父の計6人で赴いたのだ。俺は二代目カポとして俺達組織と関係を持っている日本の堅気さんたちに悠長に顔を曝けまわっている。うーん、いつになくハードな1日だったワ。ってか日本てちゃっちい島だと思ってたけど案外広いのね。
ついさっきまで会合があったこの部屋…この場所は日本では有数の最高級の旅館というものらしい。しかも相手のお偉いさん方が俺たちのためにここを貸し切りにしてくれたのだ。この際だから日本の風情を楽しんでいってくれって。太っ腹ねぇ日本のシニョーレ達は。
部屋を抜ければ辺りには技師によって立派に出掛けられた一大の庭園がある。草木や池はなんとも端麗だ。そして何よりも美しいのは…Cherry blossom、サクラだ。一本だけだがそれだけでも結構盛大に見える。四季がちゃんとある日本の今の季節は春、ちょうど今が見頃らしい。デイバンにはこんなものないからな……綺麗だ。
そんな輝いてる佳景とは裏腹に今俺達は今足の痺れと激しく格闘中。
「大体何で俺たちがこんなことしなきゃならないのかしら、ダーリン」
皆が聞きたくてしょーがなかった言葉を俺が発したら皆の目が一斉にベルナルドを見た。いや、睨んだ?
「おいおい皆そんな受苦したような目向けないでくれよ。これは日本の仕来たりだから仕方ないことなんだよ。まぁ…俺も正直キツかったがな」
そう言いベルナルドは苦笑した。いや、仕来たりだかなんだか知らないけど何も和室で会合する必要はないと思いますワ。1時間以上も正座で座らされる俺らの身にもなってくれよファンクーロ。
「何が悲しくて親父ばっかの会合に出会わせないといけないんだよ。あ〜女に囲まれたい」
「無理言うなルキーノ。ここはデイバンじゃないぞ」
「別に日本の美女でもいいぞぉ〜」
わかってないなこいつ。この伊達男め。いや、俺も人のこと言えないかも。そろそろ女が恋しくなってきたかなぁ。酒飲みながらわいわいしてぇなぁ。
「デイバンに帰りたーいよー」
「あぁホントだぜまったく。パンチの効いたホットドッグ食いてぇなぁ」
「フハハ。まあそう不満ばかり言うなよみんな。
じゃあ忍苦した君たちにおじさんからご褒美を上げようかな」
「おっ、そりゃマジかベルナルド!」
「ワオ。飴ちゃんくれんのけ?」
「そんなちっぽけなもんじゃなくもっと盛大なものさ。思ったより仕事が早く終わったんでね、1日休みが取れたんだ。明日は皆で羽を伸ばそうか」
えぇー、うそマジで!?
「イヤッホ〜ウ!!!待ってましたその言葉!!!!!!」
「っしゃあぁ!!」
嬉しさのあまり柄にもなくイヴァンと叫んでしまった。だってここ最近休む暇もなかったんだもんよ。カポって忙しいし。しかも1日中休みって滅多にあるもんじゃないし。これは喜悦せずにはいられねぇって。
「で、明日1日何すんのけ?」
「うーん。そうだなーここジャポネーゼを満喫でもするか?」
「っと、そうするのはいいがちょっとその前に」
ルキーノの言葉を制するようにベルナルドは言った。
「今夜はみんなでお花見しないか?」
―…お花見?
「なんですのん、それ」
「花見は開花した桜の下で行われる宴会みたいなものだよ。酒飲みながら皆でわいわいやりのさ。どうだ?」
「うっわなにそれ楽しそー!!!!」
「女がいないのは残念だが…酒とありゃあ話は別だな」
「…でも俺…酒、苦手…で…」
「心配するなジュリオ、お菓子もジュースもあるから」
「あ、それなら…大丈夫、です」
「よーし、食って騒いで飲みまくるぜー!!」
「決まりだな。部下に特等の場所を用意させてあるから酒もって後でそこに向かおうか」
それから俺たちは一旦解散し、自分の部屋で軽く一息吐いてから行く用意を済ませた。酒はルキーノとベルナルドがたんまり調達してくれたらしい。2人が用意してくれたんだ、きっと上質のばっかりだろうな。
5人で合流して旅館を出、俺たちは子供みたいに目をキラキラさせながら目的の場所へと向かったのだった。