LUCKY DOG1

□きっと、いつかまた夢の中で
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G:side



「あーそうだ…明日シャーリーンとアリーチェの墓参り行くんだがお前も来る…か?」




資料を熟視していたルキーノがいきなり唐突に聞いてくるもんだから思わずポカンと呆けた視線を向けてしまった。明日はルキーノにとって大切な日。命日。奥さんと娘さんの。なのに俺なんかが同行してもいいのかと聞くと、ルキーノは何処が悪いんだと即時に返してくれた。厚誼な自分たちに嫌気なんか全く覚えない、と。俺は邪魔にならないか心配していたがそうでもなかったらしい。寧ろ俺にいてくれた方が安心するって言ってくれた。それが嬉しくて俺もついていくことにした。



「もちろん」



静かに笑ってそう言ったらルキーノもそれと同じものを返してくれた。










翌日、白い薔薇の花束と娘さんの為であろう熊のぬいぐるみを持って二人で墓石の前に赴いた。その場で跪きそれをそっと備える。そして愛おしむ様に目を細めて、その男らしい大きな手で墓石を優しく撫でた。
そんなルキーノの表情は安易に言い表わせないほど優しくて、柔らかくて。そこいらのシニョーラ達なんて一発でマジ惚れてしまうだろうに。ま、まぁ自分も現にその1人ではあるケド…。だってしょうがないっしょ。こいつの横顔を眺めていると、これ以上ないって程のいい男に見えるんだもんよ。
本当に、幸せだったんだろうな…と心底思う。


「んー…もうそろそろ綺麗にしてやらんとな」


見ると墓石は所々に汚れを帯びていた。


「そうだなー。愛するシニョーレにキレイキレイしてもらえるなんて、奥さんと娘さんこの上ない幸せだぜ」


「ははっ、じゃあ毎日来てやらねえとなぁ」


「あらん、仕事はさぼっちゃいやヨ?」


「カヴォロ…幹部の俺がんなヘマするかよ。んーまぁ墓参りっつうのは頻繁に来るもんじゃねえけどな」


「そりゃそうダ」


そんな毎日毎日頻繁に訪れると、たまに赴くような嬉しい感情になんて巡り合えないだろうに。
それがまた墓参りというものの醍醐味ナンダロネー。




とかなんとか1人でぶつくさ適評してると墓石を眺めていたルキーノが不意に口を開いた。




「俺はさー……この子たちのコトを全部ただの過去の思い出として全部忘れようと今まで試みてきたが………」





「…でも…ダメ――だったんだろう?」


唇を噛みしめ次の言葉を発そうとしていたが…先に俺が口添えしてやった。

今までルキーノがどんなに辛い思いをしてきた俺もよくわかる。でもかと言って奥さんと娘さんと過ごした頃の大切な思いを簡単に忘れることができようか。


そんなルキーノの頭の後ろに右手を伸ばした。髪の間に指を絡め宥める様に優しく撫でてやる。ルキーノは返事をする変わりに俺の肩に額を預け、沈黙した。それがYESの変形だろうか。

「…………」


額を俺の肩に埋めたままでルキーノの表情はうまく見ることが出来ないが、多分今にも泣きそうな顔をしていると思う。でも、絶対に泣きはしない。意地をはってるわけでただ他人にそういう感情を見せつけるのが出来ないだけで。そうやって自分の中にどんどん蓄積していく。
奥さんと娘さんが殺されて……失って…心に相当な深い傷を負っただろう。一生消えることのない傷痕となる。でも…それを少しでも癒して、和らげるコトは出来る…はずだ。こんな俺でも。

俺の前でそんなことしなくていいのに。俺が受け止めてやるのにさ。
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