novel
□願わくば…彼女に永遠の幸せを
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「おいディセ…お前顔色が悪くないか?」
「そうか?」
ここのところ会議や謁見やら何やらでロクに寝ていないのだろうディセの顔は少し青い。
普段そんな様子を垣間見せることはしないディセだが、従者である俺にも悟られるくらいに疲れているように見える。
異世界から来た少女が黒の王子だったディセの妃になってから、フェルムートは少しずつではあるが変わってきている。
力で縛り付ける王政が解けつつあるということだ。
それがたった一人の少女の影響だというのだから驚愕する。
しかし国を変えるのには時間は惜しいもので、それこそ死に物狂いで行わなければならない。
…まぁ実際はそれほどのものではないが。
ディセは暇さえあればお嬢ちゃんのところで休んでいるものの、最近はまた目まぐるしい数の会議をこなしている。
もちろん、俺が手伝えることは手伝っているが。
「少しは休んだらどうだ
またお嬢ちゃんに心配されるぞ」
俺の意見なんか当たり前に聞かないディセにはこれが一番効果がある。
案の定考え込んだディセ。
「いや、…次の会議も近いからな
そう休んでもいられないだろう」
まったく…、人の忠告を聞かない坊ちゃんだ。
変わりつつあるとはいえ、ディセが信頼している者は少ない。
昔から頑なに心を閉ざしていたディセは自分の力しか信じてはいなかったのだから。
俺やリュオンは別として、全面的に補佐する人間がまだ少ないのだ。
だが…。
流石に顔色が悪すぎる。
倒れないとしても倒れそうには見える。
「陛下、お客様が−…」
兵士の一人が後ろに男を連れて王座の近くに立つ。
一人一人の意見をディセが聞くようになったのは考えられない進歩だ。
「ああ、お前は下がっていい」
「はい!」
兵士が下がると、男は王座の前に跪き、喋り出した。
耳の痛くなるような話ばかりだ。
同情する。
しかし…。
一番近くにいた兵士に耳打ちし、兵士は場から出て行った。
どうやらディセに気づかれなかったようだ。