novel
□幸せ思考
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柔らかい。
優しい、…温かい…、可愛い。
ニィナといる時間は穏やかにあっという間に過ぎて行く。
この世界に生まれた命は自然に枯れていくものだと思っていた。
自然に、…逆らうこともなく。
散ればそれまでのことだと考えて、疑いもしなかった。
−…この少女が現れるまでは…。
眠っているニィナに最初に声をかけたときには必ず微睡んでいて、つたない唇から漏れる 小さく微かな声。
「あとすこし…」と声色を甘くして言う。
そんな彼女に逆らえるはずもない俺は、彼女の髪を撫でながらひたすらニィナの瞳が開くのを待ち続ける。
既に明るい日差しが窓から透き抜ける。
白い肌、柔らかそうな唇に軽いキスをする。
相変わらず目覚めない。
「…んん〜…」
…今度はそうでもないらしい。
「…シン…?」
「やっと起きたな…」
「…う…ん、…」
まだ寝ぼけ眼で眩しそうに瞳を開こうとするニィナ。
「おは…よう…シン」
「おはよう ニィナ」
…朝からそんな煽るような声を出されると抑えがきかなくなりそうだ。
言葉や仕草のひとつひとつがたまらなく可愛らしく見えてしまう。
欲目かもしれないが…。
どうすれば彼女が幸せでいられるのか。
どうやったら微笑んでくれるのか。
そんなことを考える毎日が今の俺には一番大切なことだ。
「ん〜」
布団の中でもぞもぞと動き出す小動物のような彼女を抱き締めるこの時間が何より幸せな時間。
さぁ今日は…どうやって彼女を喜ばせてあげようか。
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