novel

□囚われて
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「ねぇねぇニィナ!

見てみて!校門前にいる、すっごいカッコイい人っ」


「ふ、ぇ?…カッコイい人?」


ようやく授業が終わってすぐさま帰れる準備を整える。

…としたところに友達に呼び止められた。


窓から数人の友達がきゃあきゃあと声を高らかにはしゃいでいる。


「ほらほらニィナっ!」


「きゃっ!」


腕を引っ張られて窓側に寄せられた。


「見て!あそこにいる人」



友達が指差した先に確かに人影がある。


「あ…れ…?」


あれって、…あれって。



「ワタルくん!!」

「えっ!ニィナ、知り合いなの?!」


「う、うんっ…あ、じゃあね」


友達の声を背に走り出す。



廊下で先生に注意されたけど足の速度は変わらない。


どうして、…どうして…。






「ワタルくん…!!」


「ニィナ」


私に気付くとにっと笑む。

けどすぐに顔を曇らせて睨まれた。



「ワタル、…だろ?」


「あ…ワタル…、くん」


「ははっ、しょうがないな」


かぁっと赤くなる顔を俯かせて名前を呼ぶ。
まだ知り合ってそんなに長い月が経ってるわけじゃないのに 何となく知ってるような感じの人…だと思う。



最初に会ったときは泣きそうになったくらい嬉しくて、…でもそれがどうしてなのか分からなかったけど。

仲良くなるのにそんなに長い時間はかからなかった。



「でも、どうしてあのっ…ここに」


「ん〜

会いたかったからさ」


しれっと言われてまた顔が熱くなる。


最初に会ったときからワタルくんは直球だったけど…今もそうだ。




「学校はもう終わりだろ?」

「うん!」


差し出された手を握る。

その体温まで どこかで知ってるような気がする…。



「じゃあ今日はこれから…暇?」



ワタルくんの声が低くなる。握られた手に力が増した気がした。

びくっと体が跳ねたけど、でも体は抵抗を示さなくて。



「…うん」


「…そっか」





歩き出す速度は、私とおんなじ速さ。

…さり気ないけど合わせてくれてる。



「じゃ 行こうか」


「うんっ!」



何故か懐かしくて、…何故か嬉しくて。


最初にワタルくんが言った。

運命みたいな、出会い。


「…ね」


「?」







「明日も迎えに来て いい…?」


囚われるような、瞳。


「……うん」




ねぇきっと、どこに行っても、


…逃げられない…よね。





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