novel
□甘い言葉
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魔王との対決に勝利し、全てが済んだ後…私はアルヴァンドと一緒に白の国に帰った。
私があたふたとしている間にも淡々と事は進み、結婚式が終わったのは幾日か前。
今は花嫁修業に忙しく身を置く、事実上王妃の身分だ。
アルヴァンドは相変わらず毎日が忙しくて…でも必ず私のところに帰ってきてくれる。
それがどんな状態でも、必ず。
一度 疲れているなら無理をしなくてもいい…と言ったことがある。
勿論、本心ではないけれど…。
けれどアルヴァンドは優しく微笑んで言った。
「君が良くても私が君に会いたくなってしまう…君に会えない日々など、私には耐えることが出来ない
出来ることなら永遠に この腕の中に閉じ込めてしまいたいと思うほどに…」
囁かれて、抱き締められて。
そんなことを言われてしまえば私も素直になるしかなくて。
「ごめん…本当は違うの…
アルヴァンドに…傍にいて…欲しい」
どきどきしながらそう言うと、アルヴァンドは本当に嬉しそうに笑ってくれた。
けれどこうして一人でいる時間はやはり寂しい。
花嫁修業という名で王妃に相応しくなれるように、相応の立ち振る舞いやダンスも習いながら生活しているけれど…ほんの少し一人になるときにはアルヴァンドのことを思い出してしまう。
甘い、優しげな囁き。
目覚めて一番最初に会う、愛しい人。
「…会いたいなぁ…」
もう黒ずんできた空を眺めながら呟いた。
「それは…誰に対しての言葉か…聞いても良いだろうか」
「!!アルヴァンド…!」
後ろから聞こえた声に振り向けば、予想通りの人がそこにいた。
「ニィナ…
さきほどの言葉は…誰に対してのものなのか…聞いてもいいだろうか」
珍しく微笑みを隠すアルヴァンドに慌てて言った。
「誰って、アルヴァンドだよ!
アルヴァンドに会いたかったの!」
「…私に…?」
言ってしまってからハッとした。
まずい。
こんな我が儘…アルヴァンドがまた無理をしてしまう。