企画小説

□ゆるぎないものひとつ
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「ぁ、…ぁあ…っ!スク、も…ぉ」
ぐちぐちと自分の身体の内から濡れた音がする。
身体は熱くなる一方だ。
「随分、気持ち良さそうじゃねぇか。自分の指でよぉ」
XANXUSは限界を、スクアーロの熱が欲しいと訴えるが、スクアーロはただそう言って見ているだけだった。
XANXUSは体内に自分の指を挿れ、スクアーロに促されるままに動かしていた。
自分で解す行為は自慰みたいで激しい羞恥を煽られる。
「やらしいボスさんは自分の指銜えて十分気持ち良くなってんだろぉ。じゃあ、俺はいらねぇだろうが」
スクアーロは酷く優しい調子で言うが、その銀の瞳に熱は見られなかった。
「ぁ、…や、だ…スク」
XANXUSはびくりと肩を震わせ、涙の滲んだ声を漏らす。
XANXUSの懇願する言葉を聞いてもスクアーロの態度は変わらないようだった。
冷めた瞳のままスクアーロは冷めた声をXANXUSに向けた。
「足りねぇなら指増やせばいいだろうがぁ。ま、仕方ねぇ。今回だけ手伝ってやるよ」
そう言うとスクアーロはXANXUSの指の埋まったままの秘部に指をのばした。
XANXUSの秘部はとろりと蕩け受け入れることを期待してかひくひくと収縮を繰り返している。
「ハッ、4本も銜えてんのにまだ足んねぇってひくつかせて、ほんと淫乱だよなぁ」
口元を歪めたスクアーロはひそりと苦笑を漏らした。
「お前をこんなにしたのは、俺、かぁ。俺なんだよな。じゃあ、俺がいなけりゃ…。…なぁ、XANXUS」
ぼそりと呟くように発せられたスクアーロの言葉はXANXUSにも己にも何かを耐えさせ納得を無理にさせるような調子だったが、熱に浮かされたXANXUSには聞こえなかった。
ただただXANXUSはスクアーロの欲を望み昂ぶる熱を持て余し、体中を駆け巡る甘い苦しみからの解放を願うだけだった。


夢現の中で髪と頬を優しく撫でる手の感触があった。
そして常とは違う囁くようなスクアーロの言葉。
「…すまねぇ、XANXUS。愛してる…」
何で謝るんだ。何を謝るんだ。
そう問いたかったが、疲れ果てた体は言うことを聞かずXANXUSを眠りの淵に追い込んだ。



目が覚めると隣にあったはずの温もりは無くなっていた。
あのスクアーロの囁きの意味を聞きたかったのに。
いや、あれは夢の中だけでの出来事だったのかもしれない。己の願望が見せた都合の良い夢。
スクアーロに冷たくされるようになった己の醜い未練の欠片なのだろうか。
以前はあの煩い大声に出すこと無く全身でXANXUSを愛しているのだと訴えていたスクアーロの心は冷たく閉ざされてしまった。
以前はXANXUSが求める必要も無い程にスクアーロから求めてくれていたのに。
一定以上の距離を置くようになり離れてしまったスクアーロはXANXUSが求めても与えてくれなくなった。
スクアーロの熱を、欲望を、心を欲しているのに、応えてはくれない。
ただXANXUSの昂ぶった欲を処理するように解放してくれるだけ。
主の命令だから仕方なくと言うように。
何故だ、と問いたかった。
自分に飽いたのか。愛想が尽きたのか。
もう、自分を嫌いになったのか…。
ハッ、と溜め息のように苦笑を吐き出す。
夢との落差に唇を歪めてみせることしかできない。
夢の中では愛されていることを疑いもしない問かけだったのに現実はどうだ。その愛自体を問わなければならないなんて。
XANXUSは雫を溢しそうな瞳を強く瞑ることで耐え、目の奥を走る鈍い痛みをやり過ごそうとした。
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