企画小説

□美しき世界
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苛々する。XANXUSは余りの苛つきに思わず手にしているカップを握り壊してしまいそうだった。
原因は目の前にいる。
目の前で楽しそうに笑い合っているスクアーロと山本武。


次期10代目沢田綱吉とその守護者達は長期休暇を利用して、ボス研修や修行といった名目でイタリアに旅行に来ていた。
そして知り合いだからとヴァリアーの幹部達は呼ばれたのだった。
長い確執の上で和解した父子であるので9代目は何かとXANXUSに構いたがり、XANXUSとしては少し辟易として鬱陶しく思い、だからなるべく近付かないようにしているボンゴレ本部に呼び出され気分が低下していた。
その上にこれだ。


目の前で楽しそうにしている二人。

ああ、苛々する。

常はXANXUSのことを最優先し、気が狂っているのかと思えるほどに自分だけを見つめている男が、自分を放っている。他の人間と楽しそうに話をしている。
そのことが酷くXANXUSの心を苛立たせた。

あれは、あの銀の鮫は自分の、自分だけのものなのに…。

気にしないようにしようとすればするほど心は波立ち、感情が溢れそうになる。
XANXUSは気を落ち着けるために、見たくないものから視線を逸らすために、手にしたカップに口を付けた。
どこか変わった匂いがする緑色の液体。
それは綱吉が土産として持って来たらしい緑茶というお茶らしかった。
そのお茶を少し口に含んだ途端XANXUSは慌ててカップをテーブルに戻した。カチャと茶器とテーブルの擦れる音がしたが、最低限の動揺で抑えたつもりだ。
内心の慌てを表に出すことは自分の誇りが許さなかった。
しかし心の中ではくそっ!と乱暴に毒づく。
猫舌のXANXUSにとって出されていたお茶が熱すぎたのだ。
いつもなら自分の銀の鮫が丁度良い温度にした物を持って来てくれるのに。

くそ、くそっ!ドカスが!…熱ぃんだよ!!

何度も何度も内心では毒づくが、実際には小さく「熱ぃ」と口の中で呟いてみただけだった。
大声でスクアーロに訴えたい気分だが、綱吉達に弱味など見せたくない。
だからXANXUSはそうすることしかできなかった。
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