企画小説

□L'amore e` la saggezza dello sciocco e la follia del saggio.
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スクアーロは器用な男だ。その器用な指先で様々なことをXANXUSのためにしてくれる。


XANXUSは今日のおやつの時間のためにケーキを作っていた。作ってスクアーロと一緒に食べようと思っていたのだ。
材料を用意して、いざ作ろうとバターをまな板に乗せ包丁を握る。
「ッ、痛っ」
バターを切っているとうっかり自分の指まで切ってしまった。
じわりと指先に赤い血の玉が浮くのを見ていると、バタバタと大きな足音を立ててスクアーロが走ってきた。
「だ、大丈夫かぁ?XANXUS!」
「っ!」
スクアーロはXANXUSが怪我をしたことを何故か察知したらしい。お前は超能力者か、と思う。
しかしXANXUSはどうして。とは聞かない。
以前に聞いた時、スクアーロは至極当然の顔をして「XANXUSのことなら何でも分かるぞぉ」と言ってのけたからだ。
それ以来XANXUSは聞くのは無駄だと悟った。
「XANXUS、指血ぃ出てるぞぉ」
そう言うと、スクアーロはXANXUSの指をとって傷に舌を寄せ血を舐めると口に銜えて強く吸い上げた。
XANXUSが驚いて手を引こうとするも、スクアーロの強く握った手に許されなかった。
「怪我なんかして、危ねぇだろうが。…ケーキ食いてぇのかぁ」
しばらく吸って止血をしたスクアーロがようやく放すと、XANXUSの方を覗いた。
XANXUSの前にはまな板の上にバター、その隣には生クリームと砂糖、小麦粉、そして赤い赤い苺が準備してあった。ケーキの材料だと一目で分かる。
それを見たスクアーロはにこりと笑みを浮かべると「すぐに作ってやるからなぁ」とXANXUSと立ち位置を換えながら言った。
俺がする。と言う隙も無くスクアーロは手際良くケーキを作り上げていく。
白く細いが剣を扱うためにしっかり鍛えられた男の手と戦うための機械の手が驚く程繊細な動きで良い匂いのする物をあっという間に生み出した。
「ほら、XANXUS。もうすぐできるからなぁ」
優しくあやすように言ったスクアーロは味見というように生クリームを付けた苺をXANXUSの口に運んだ。
自分好みに味付けされた生クリームと苺の甘酸っぱさにXANXUSはどうしてか悔しくなって、苺を差し出すスクアーロの指まで銜えると甘噛みしてやった。



スクアーロは優しい男だ。XANXUSがどんなに乱暴に接し我が儘を言っても文句を言いながら受け止めて叶えてくれる。


XANXUSはスクアーロが作ったケーキを食べた後もどうにも悔しい気がしてその苛立ちをスクアーロにぶつけた。
スクアーロは「何だぁ!」と文句を言うが、XANXUSが機嫌を損ねているのを感じると優しく前髪を撫でてきた。
前髪を撫でられるのが気持ち良くてうっとりするも、やはりスクアーロのその仕草が大人っぽく格好良く思えて益々悔しくなった。

くそがっ。俺ばっかり…。

自分ばかりがスクアーロにドキドキするのがとても悔しく感じられ、XANXUSはスクアーロにもドキドキさせてやると決心した。
その日の仕事を終えたXANXUSは呼ばれた夕食の時間からスクアーロを見返すための計画を実行することにした。
まずいつもグラスなどを投げ付けて暴力を振るっているのを控えてみる。そして嫌いな物があると怒って皿を引っ繰り返すのも我慢した。
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