企画小説

□Non ce la faccio piu`!
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朝起きて身支度を整えると俺は愛しい主XANXUSの元へと向かった。
今日は俺もXANXUSも仕事が休みだ。

つまり一日中いちゃこらできるっつうわけだぁ!

俺は意気揚々と廊下を進む。
XANXUSはこの10年で大分落ち着いた雰囲気になった。
出会った頃は俺も若かったので、XANXUSの怒りとその気高い宝石のような深紅の瞳に一目惚れして一生を捧げると決めた。XANXUSは本当に強くて格好良いなぁと憧れていた。
しかし、氷の眠りから目覚めたXANXUSは俺よりも年が下になり、俺はその脆さを知った。可愛いXANXUSを俺が守って大事に愛してやるんだと思ったもんだ。
そして10年経ってXANXUSは綺麗になった。前髪を下ろすようになり落ち着いた雰囲気になったXANXUSは同時に色気も増した。

前は可愛いって感じだったのに。何だアレ。あのエロスの化身のような美しさは!

俺はXANXUSを思い起こして叫び声を上げそうになるのをなんとか抑えたが、顔がにやけるのは止められそうになかった。


XANXUSの部屋に着くと俺はノックも無しに扉を勢いよく開いた。
鋭く輝く紅い宝石のような二対の瞳がこちらを睨む。
愛しいXANXUSと彼の匣兵器のベスターだ。
XANXUSはベスターが気に入りなのか戦いの場以外でも開匣して傍に置いている。
今もまた絨毯の敷かれた床に直に座り、ベスターの毛並に埋もれるように背を預けていた。そして豊かなその鬣に顔を寄せ、両腕を首筋に回して抱き締めていた。さらりと愛しげに優しい手付きで撫でてやっている。
俺はそれを見て胸に黒いもやもやしたのが生まれるのを感じた。
ずるい、と思う。俺にはいつも殴る蹴るでグラスとか投げ付けるくせに。
俺もあの綺麗な手で優しく撫でて欲しいと思った。一杯構って欲しい。ベスターよりも俺を。
そう思った俺はXANXUSに声をかけた。
「なあ、XANXUS。今日仕事休みだろぉ?俺もだぁ!だから…」
意気込み過ぎて元からでかい声がより一層大きくなってしまったらしい。
全て言い終わる前にXANXUSに煩いとばかりに睨まれた。
うっ。と怯んで言葉を途切らせるも、再び口を開く。
「ざ、XANXUS。朝飯とか食ったのかぁ?俺作ってやるぜぇ!」
自分に構って欲しくてXANXUSの様子を窺ってみるが、XANXUSは俺を無視するように目を瞑りベスターに更に身を寄せた。
そのXANXUSの態度に俺は胸のもやもやが増えるのが分かった。
「なぁ!XANXUS!!」
「るせぇよ。…飯は食った」
俺が苛ついたように声を上げると、XANXUSはもっと苛ついた声で言葉を投げて寄越した。
そして怒りの滲む声で続けた。
「喚くな、ドカスが。用がねぇなら、出てけ」
俺は余りのショックで目の前が暗くなった。
「!分ぁったよぉ!!」
くそっ!XANXUSの馬鹿野郎!!と思いながら、踵を返して部屋を走り去った。
だから俺が走り去った後でXANXUSが「ちっ。ホントに用がねぇのかよ…」とつまらなさそうに呟いていたことを俺は知らなかった。
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