Pandora Hearts

□幼児遊戯
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「帽子屋さん、助けて」


へらりと笑って部屋に入ってきたのは例のごとくあの嫌な顔………、?


「え?」


「間違えて薬飲んじゃったらこんなになっちゃった」


彼は、自分の腰以下の身長で、


幼い子供と化していた。




























「…よ、と」


「うわぁ、高いや」


オッドアイのこの幼児を抱き抱える。戸棚の上にある瓶を小さな両の手がしっかりと掴んで、頭上から下ろしての声。

床に下ろしてやれば、必死に蓋をこじ開けようとしているからふんだくって開けてやる。


「またヴィンセント様…一体何がどうなったらこんなことになるんですカ?」


「紅茶だと思って飲んだら子供になっちゃう薬だったみたい」


本当に怪しいものを持っているなと怪訝そうな顔をする。
身体が縮むって…
どういう原理でそうなるのか、全く教えてほしいものである。


ただ、小さくなった毛嫌いしているこの男は、癪ではあったがなんだか面白くて、ぽすと頭に手をおく。
頭小さ、と思ったが口には出さずに、馬鹿ですカと悪態をついた。






話によると、小さくなってしまい解毒剤が棚の上にあったためとどかなくなってしまったとか。

困った挙げ句他人にばれないよう隠れてここまできたらしい。


「こんなこと頼めるの帽子屋さんくらいでさ…」


「私は貴方の雑用係ではありませんが」


大袈裟にため息をつくと、今の姿にそぐわないくつくつという笑い声が部屋に響いた。

ちゃぷちゃぷと揺れる小瓶の中の無色透明の液体。
早く飲めと促せば、その前にと妖しく笑う。


油断していればぎゅむと腰に抱きつかれる。
零れますヨと呆れて蓋の開いている小瓶を持ってやる。


「なんなんですカ?」


「ん〜…小さい体を堪能したくて」


えへへと笑う子供に、また早く飲みなさいと呟く。


「飲ませてよ」


「嫌ですヨ」


え〜と不貞腐れ、どうして?とぎゅ、と服を掴んでくる。
このガキはと眉を潜めた。
ただ、このままほったらかしにしておくわけにもいかない。
放置しても多分飲みはしないだろう。

どうせ


「どうせ私としたかったから私のとこまで来たんでショ」


「うん、正解だよ」


はああ、とわざとらしくため息をつくと、ヴィンセントを抱き上げた。

片手で薬を口に含み、小さな唇に自分の唇を重ねる。


「…ん、」


「飲めました?」


こきゅ、と細い喉がなる。少年は、んべえと顔を歪めた。
苦かったようで。
自分の口にの中も嫌な痺れが広がっている。


「むずむずする」


「はあ…」


ぽうっと身体が淡く光り始めた。
その光に見とれていると、ぼふんとヴィンセントの身体が元の大きさに戻る。
急激な重さの変化に後ろに2、3歩よろけてひっくり返った。


「あ〜ごめんね。大丈夫?帽子屋さん」


「お、もい…退いてくれますカ?」


重いなんて酷いなあと元に戻った毛嫌いする男は笑ったが、大人しく身体の上からおりて、早くしようとせがんだ。
この男を相手にするのは骨が折れるのに。


手を引かれ、ベッドに放り込まれる。


相変わらず展開が急だなとため息をつけば、どうしたの?とヴィンセントは笑って尋ねた。


「するんですカ」


「お願い、帽子屋さん」


甘えるなと眼をそらす。
甘えるな。
甘えられると弱い。

帽子屋さんが大好きなんだよと身をすりよせてくる青年の頭をつい撫でる。


「しょうがないですネ…」


「ありがとう」


また上手く丸め込まれたなと頭をかいてから、ちゅ、と額に口付ける。
ぐんと、華奢な腕をひいて組みしき、瞼、頬と順に口付け、そっと唇に触れる。


「ん…いやだよ、焦らさないで」


「煩いですヨ」


文句を言う青年に黙れと言わんばかりに深く口付ける。







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