デュラララ!!

□嫌い≒???
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「…俺の綺麗な顔にストレートでパンチ、しかもグーを決めるって…どういう神経してんのさ」


口の中は血塗れ。
飛んでったナイフは見事に落ちていた空き缶に突っ立った。


ひっくり返ったままシズちゃんを見れば俺が大人しく殴られたことに機嫌を良くしたようだった。


「今日はやけに素直じゃねえか…そのまますり身にしてやるよ」


もうこれしかないなと慌ててばねのように起き上がってシズちゃんに飛びつくようにして唇を奪う。


シズちゃんも引き剥がしたり、ぶん投げたり、俺の舌なんて噛みちぎってしまえばいいのに、そうしない。


夢中で舌を伸ばせば薄く開いたシズちゃんの唇を隔てて舌先が触れ合う。

どくんと、心臓が痛むように唸る。

欲求。欲望。本能。

欲しい、欲しい欲しい、

シズちゃんが欲しい


「…、は…ぁ…」


シズちゃんの背中にすがりつくように腕を回して、ただ口付ける。
どろどろと溢れた唾液が首筋にまで流れてくる。


いつからかシズちゃんの舌も絡めあうように伸びてきていて、互いの熱い吐息が混ざりあった。


「は…シズ、ちゃん…」


驚くくらい擦れた声が重ねた唇の隙間から唾液のように零れた。

何度も、何度も

ほとんど無意識にシズちゃんを呼ぶ
大嫌いな、世界一名前負けしているだろう平和島静雄と言う人間の、唯一のあだ名で俺は呼ぶ


シズちゃん、

シズちゃん、

嫌い嫌い、大嫌い


だから俺を求めてよ
勝手に自爆して壊れてしまいそうだ


「ん…ふ、シズ、ちゃん…シズちゃん、ねえ、シズちゃん…」


「喋んな」


舌噛むぞと口内に響く低音。それは脅しじみたそれではなく、自惚れれば純粋な優しさ。
血に塗れていた口内からは独特の鉄臭さは消えていて、シズちゃんのか自分のかもわからない唾液が傷を洗い流すように流れ出る。



「、ふ……」


唇がびりびり痺れている。
膝から力が抜けて、離れた瞬間にへたりこんだ。


やばい、バカにされる


そう思って立ち上がろうとするが一度抜けた腰はそう簡単に復活はしない


「…これは手前の言うことを聞いてやるわけじゃねえ。単に俺の欲求不満解消のための作業だ。そこんとこよく覚えとけよ?」


「…うん、約束するよ。後でネタにして揺すったりなんかしないさ。被害を被るのは俺もだからね」



挑戦的に笑えばシズちゃんは、一つ息を吐き捨てて、俺に近付くと猫にするようにコートのフードをもって軽々と持ち上げる。
人間て片手で浮き上がるもんなんだね、と苦笑していると、放り投げられて落書きだらけのコンクリートに背中を叩きつける。


「痛…っ、ん…」


へたりこんむ前にシズちゃんに腰を抱かれて無理矢理立たされたまま彼らしく荒々しい暴力的な口付けにぞくりと背中が震えた。

貪られるように求められて、それが嬉しくて、シズちゃんの首に両腕を回して更に深くキスをする。


頭が麻痺している。
異常なほどに。



シズちゃん、シズちゃん

シズちゃん、ああ、ああもう

嫌い嫌い嫌い嫌い

嫌い嫌い、嫌い


「嫌い…シズちゃん」


君が、嫌い


離れた唇を見つめて呟けば、シズちゃんはじれったそうに頭を掻いた。


「いい加減にしろ」


「何をだよ。俺はシズちゃんが嫌いだ、大嫌いだ。わかってるでしょ?ムカつくなら俺となんてしなきゃいい。さっさと俺を棄ててけばいい。なのになんでそうしないんだよ。シズちゃんがわからない。わからないから嫌いなんだ。シズちゃんなんか「黙れってんだよ!!」



シズちゃんがキレた。


フーフーと荒い鼻息。牛みたい。バカみたい。

あ、シズちゃんはバカか。

「認めろよ、そんな顔すんな…腹が立つ」


「だから、何を…」


すう、と息を吸う音がした。





「手前は、俺が、好きなんだろ?」










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