デュラララ!!
□嫌い≒???
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「ぅ…、痛…」
しかめた顔に罵声が落ちてくる。
「お望み通り殴ってやったぜ?ずいぶんと殴られたかったみてぇだからなぁ…イザヤ君よぉ」
「…そんなMな欲望はないよ。てかなんで怒ってないのさぁ」
「あ゙?」
「だってシズちゃんが本気で怒ってたら俺のお腹は今頃もっと風通しよくなってたはず」
また深くなったシズちゃんの眉間の皺とこめかみの青筋を見つめて、ああ、また怒らせてしまったなあとおかしくなる。
俺はやっぱりどこまでもシズちゃんに嫌われている。
「開けられてえのか?そいつは悪かった。今すぐ開けてやるから今すぐくたばれ、ノミ蟲野郎」
なら、シズちゃんはバカ野郎だねと笑ってみせれば、あからさまな苛立ち。
ああ、嫌われている。
そう思うと、異常な性欲に掻き立てられて、無意識のうちにシズちゃんに抱きついていた。
シズちゃんは、優しい。
シズちゃんは優しい、反吐が出るほどに。
「降りろ」
そう、あからさまな苛立ち。それはどこまでもあからさまな狂気。
苛立ちに呑まれた嫌悪。それはどこまでも純粋な願望。
「降りる。だから、抱いて」
*
もう少しの驚きを期待していたのに動揺の欠けらもなしに、あ゙?と怪訝そうに持ち上がる片眉。
どっこいしょ、とわざとらしく声を上げて立ち上がると、吹き飛んだ彼の煙草を拾いにシズちゃんから少し離れた。
身体にニコチンを充満させるためのその小さくなった草の束を拾い上げて咥えてみる。
ここから見えるこの景色は、シズちゃんのそれと同じだろうか。
いや、それを認めたら世界中のスモーカーと同じ視界を広げていることになるわけで。
これはスモーカーの視界であり、シズちゃんのではない。
「だいっきらい」、な
シズちゃんのそれではない。
げほげほと残った煙にむせて、吸い殻を改めて地面に捨てる。
吸い殻も捨てられてからまた吸われることがあるなんて想像もしなかったろう。
「俺もだ、この変態野郎。調子にのってやがるとミンチにすんぞ」
「だからぁ、抱いて欲しいんだってば。言ってる俺も恥ずかしいんだよ?わかってんの?」
「うるせえ、意味わからねえ上に手前の言うことなんか誰がきくか!!」
…泣きそうだ。
伝わらないとは思っていたがここまでとは。
シズちゃんが嫌い、でもそれは俺の唯一。
シズちゃんはきっと俺のこと宇宙で一番嫌いだろう。
そんな唯一で構わないというのに。望みすぎてはいないはずなのに。
「なら、シズちゃんの欲求満たすために使えばいいさ」
「手前…いい加減に「ろくに女の子抱いた事なんてないんでしょ?シズちゃん馬鹿力だから。俺ならそんな簡単に壊れないし、壊して本望じゃないの?」
自傷的な顔をしているのはわかってる。笑顔が引きつってるのもわかってる。
くだらない自意識にこんなに苛まれている。
だから助けて、欲しい
あんたに助けを求めるなんて、死んでもごめんだと思ってたけど、
ぐちゃぐちゃにしてくれれば全部消えるから。
俺の言うとおりになるのは癪にさわるとキレかける。
帰ろうとするシズちゃんを引き止めようと袖口から出したナイフを翳せば、刺してみろと言わんばかりに眼を爛々と光らせて、くんと身体を寄せてくる。
気付いたときには左の頬に有り得ないくらい痛み。