デュラララ!!

□嫌い≒???
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「……シズちゃんのこと考えてたよ」


あ゙?とあからさまに嫌な顔をするシズちゃんに、やれやれと立ち上がる。
一人感傷に浸る時間は、突然の彼の暴力にも似た強い何かに強奪されて塵のように散ってしまった。

くらりと立ちくらみによろけると、シズちゃんは敵意と苛立ちを獣のように剥き出しにしたまま、何を言っていやがると低く唸る。


「…人への愛を確かめてたのさ。それからシズちゃんについてもね。……それなのに遠慮もせずに人の空気にずかずかと入り込んでくるなんて、流石だよ。なんのために俺がこんな路地裏にわざわざ独りでいたと思ってるの?そんなこともわからない?あ、そっか、仕方ないよね、シズちゃんだし。」


「…い〜ざ〜やぁ〜……」


シズちゃんの掴んだコンクリートの壁は、まるで発泡スチロールのようにくしゃりと彼の指を沈めさせて。
流石にコンクリート投げられるのは危険かなぁ…。

警鐘をならす頭を二度ふるふると振って、丸腰のまま、数メートル先のシズちゃんへ駆け出す。
シズちゃんは俺が攻撃するもんだと思ったらしく、更に眉間の皺を深くし、青筋をたててコンクリートではなく、あいていた右手でストレートに殴りかかってきた。
頭を下げてひょいと躱すと、一気にシズちゃんの細身な背中に両腕を回し、身体全部で飛び込む。


「、なっ…」


シズちゃんはよっぽど動揺したらしい。
サイの突進すら軽々受けとめそうなシズちゃんが俺ごときの体重でバランスを崩して、ひっくり返った。

俺はすぐ身体を起こすと、尻餅をついたシズちゃんのお腹のうえに座って、彼のバーテン服の胸元をぎゅうと掴んだ。
シズちゃんは重いとは言わなかったけれど、ものすごく怒っていた。
でも同時にものすごく動揺していたのがわかった。

吹かしていた煙草がない。
きっとさっきの拍子に飛んでったんだろう。






欲しいものがそばにあると不安になるのは、みんな一緒だろうか。

理由は不明。
不明瞭な欲望。

情報屋にもわからないことがあるのねと誰かに問われたことがある。

あるよ、たくさん。
たくさんだから俺は知りたいと思うんだ。
今はなにより自分の気持ちについて。

身体が近い。

体温が近い。

暴力が近い。

視線が近い。

吐息が近い。

想念は、遠い。


笑いたいのに笑えない。
出てくるのは相変わらず自傷的な苦笑。
握ったシズちゃんのバーテン服をもっと握り締めれば、指先に彼の体温が触れて。



「手前(テメエ)…何して、んっ」


怒るシズちゃんの唇を黙らせるように自分ので塞ぐ。
突き放しも殴りもせずに、シズちゃんが身体を支えるために背中側でついていた片方の肘から、かくんと力が抜けて身体が動いたことで、押しあてているだけだった唇は哀しいくらいあっさりと外れた。

実際、殺されるかもなあと少し怖くて、おそるおそる顔を放してみると、見たことないくらいぽかんとしたシズちゃんがいた。

サングラスが鼻先までずり落ち、それに隠れていた彼の視線は真っ直ぐに俺の視線と鉢合わせた。


「あははは、変な顔。似合わないよ、シズちゃん」


俺の顔はちゃんと笑っているのだろうか。
シズちゃんは、やっと消えていた殺気を取り戻して、何もいわずにズレたサングラスをもとに戻した。


「殴らないの?シズちゃん…っ!?、がは…」


くのじに折れた身体のせいで思わずシズちゃんの胸にもたれる。
腹に猛烈な激痛。
口の中に広がった苦い胃液。
こくんとそれをようやく飲み込み現状把握に思考すれば、すぐにシズちゃんに腹を殴られたことがわかった。







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