Pandora Hearts

□溺夢輪廻
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「お前が羨ましい」


「…何故」


「お前は覚醒する瞬間を、何度も感じるだろう?」


よくわからず、ただ、らしくないなと笑う
らしくないもくそも、俺が作り出した彼だから、そんな言葉に意味はないのだが
声の主は探さずに鼻で笑った

好きだと呟いて一粒涙を落とした


好きだと聞いた気がして、また目を覚ました



*



「ギルバート」


「ん、…グレン」


ギルバート、
またグレンが名前を呼ぶ
ああ、再びこの夢に帰ってきた
会いたかったと手を伸ばせば顎をとられ貪るように口付けられた



「ん、ふ…ぅ」



舌をねじ込まれ溢れた唾液が顎を伝った

ギルバート、

くぐもった声でまた呼ばれる
存在を確かめるように呼ばれる
おかしいな、彼は
俺が作り出した紛い物なのに

こんなに愛している



「…ん…、はぁっ」


長い口付けに酸素を求めて大きく息を吸った
首筋に唇が這う
ひう、と喉をならして身を捩る
グレンの指が少し前に俺がグレンの服に吐き捨てた白濁とした精液をこそいで、指に絡ませた
ベッドに押し付けられるように上からぐいぐいと深く口付けられ、グレンはその状態のまま後孔に精液を絡めたぬめる指を押し込めた


「ぅ、あぁ"あっ!!ぁっ、ふぅ」


「痛いか?」


貫くような痛みに一時的に顔をしかめたがゆるゆると動く指に甘い声がもれる
そしてふるふると首を横にふった


グレンはくつくつと僅かに微笑するとばらばらに指を動かし、爆発しそうな快楽を与える

弓なりにしなる背骨
跳ねる身体にベッドがぎしぎしと音を立てて軋んだ


「ギルバート…何故だ」


なにがと心に思う
夢だから、なのか考えが伝わったようで、尋ねていないのにグレンは答える


「何故、私なんだ」




その問いは、多分彼の口から出た俺自身の問い
昔、グレンが好きではなかった
否、そんな言葉よりもっと怪訝な気持ちを抱いていた気がする

彼は不気味だった

今俺を抱くグレンとは似てもにつかないほどに、不気味だった
同時にどこか妖艶で、子供心に惹かれる何かがあったのかもしれない
俺は何故グレンを選んだのか
明確な理由はわからないが彼にこうされたいという妄想がきっとどこかであったから

夢は従順にそれを具現化したのだろう


思考をめぐらせているうちに、指をぬかれ彼にそぐわない熱を帯びたそれが体内に侵入してくる
背骨がきしみ、ぎしりとスプリングが鳴く
声にならない声をあげ、陸にあげられた小魚のようにぱくぱくと口を開け放して

全てを飲み込んだ瞬間にグレンに強く抱き締められる


「ぅ、ぁあっは、あ」


結合部がさらに深くなって声を漏らせば、グレンはそっと頭を撫でてくる

額に口付けられて虚ろな意識の中でグレンの手に触れて指を絡めた


「お前は私の物だ」


まるで暗示のような言葉を聞く
だが心地いい
グレンは静かに続けた



「だからお前を一人にはしない」


ああ、これだと思う
俺がはまってしまった理由はこれだと思う
グレンは絶対俺を一人にしたりしない
だって彼は俺の夢だから

ここにいれば、俺は一人にはならないから


「動いて…ぁ、んっグレ、ン…」


ああと短めの返事を聞いて、それでも我慢できずに自分から腰を揺らして彼を求めた
からめた指が擦れ合うたびに快楽はぞくりと背筋を伝って

最初はゆるゆると
次第にがくがくと乱暴に突かれて、押し寄せる快楽に意識が飛び掛かる
なのにグレンがべろりと胸の突起を舐めあげるから自分の喘ぎ声で煩いと意識が戻る


「あ゙、ゃあっあ、ん、キス、してっ」


はあと荒く性急にグレンが口付けてくる
舌が絡み合い唾液はねっとりと溢れて落ちる
貪るようにもっと深くとキスが深くなれば、ぐんと奥を突かれる
前立腺を抉るように深く強く突かれて限界は限りなく近い


「ん、んぐっん゙ん!」


くぐもった声が口内に響く
もう出ると絡めた手を握りしめ大きく果てる
びくびくと身体が痙攣する中でグレンは一呼吸おいてから体内に大量の精液を吐いた



*




なかなかグレンは離してくれなくて
1分ほどたってずるりと出ていった
喪失感にグレンと名を呼べば、ギルバートと名を呼んでくれる


「好き…なんだ」


「ああ、」


台詞が変わったとあの人形の様な眼光を見る
相変わらず感情に乏しいそれに胸が鳴く
何故だか俺は知っていた
決して愛などではなく俺の利己的な自意識のせい
彼もそれを知っていた
それは彼も俺だから
彼は俺の夢だから
俺はグレンの物、そのグレンは俺の物、ギルバートという存在は結局俺の物



「愛してる、ギルバート」


ほっと息をついてみせる
だがそれは安堵なのか

グレンが好きだ
否、この夢が好きなんだ
厭らしいこの夢が好きなんだ
汚い気持ちを知りながら、グレンは俺を責めたりしない
彼はそういう絶対的な存在だったはずだから


そしてまた一歩、現実世界から俺は遠退いていく


グレンに抱かれてベッドに横たわる
彼の胸にすがりつくようにして眠り続けている俺はいつ本当に目覚めるだろう


もはやどうでもいい
目覚めなくてもかまわない
どうせ夢の中を目覚めながら渡り歩くのだから



早く【次のグレン】に会いたいと
俺は死んだように眠りはじめた






endless…




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