Pandora Hearts

□忘却傷痕
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「…もう入れますカラ」


「ぇ…あ、…い、痛っ…、止め…」


猛ったそれを触れてもいない後孔に突き立てる。なかなか入らないが無理矢理腰を掴み押し込む。
赤い鮮血が後孔から落ちた。


「痛、い…やめろっぶれいく、ぶれ、いくっ」


「煩い」


裂けるのも気にせずに奥まで突っ込む。
痛い、痛いと涙を流しているけど、そんなこと気にも止めずに腰を揺らす。


「気でも、失ってしまったほうが、…ん、楽かも知れませんヨ?」


「あ、ぐ…」


痛みに悶絶しながら、ギルバートが顔を歪める。
そうだ、忘れないように、傷つけるんだ。

忘れられないくらい傷付けば、そうすれば、


そうすれば、自分が死んでも忘れないでしょう?

自分が死んでも、他の人間のところに行こうなんて思わないでしょう?


どうせ、もう、永くはない。

だから、強烈な記憶でいられるように、傷付けるから…


「ん、あ、ぁ゙…ぶ、れい…く」


「煩い、煩い、煩い…大人しく壊れてしまえばいいんですヨ。私のこと以外わからなくなってしまえば…」


ガクガクと揺さぶられながらギルバートが薄く目を開く。

何か、文句があるのか

それとも、呆れ果てたのか


そんな眼で見るな…


「何ですカ」


「…ぶれ…、く…」


そっと、ギルバートの手が頬に触れてくる。
驚いて思わず律動を止めると、ギルバートが何か言いたげに口を動かす。
「何ですカ?あきれたんですカ?私を嫌いになったんですカ?それでいいんですヨ、それで「ぶれいく…」


は、と口をつぐむ。
ギルバートの手が頬を滑る。


「ど…して、泣く…の」


「え…」


慌てて頬に手を触れると、確かに濡れていた。
自覚すると、溢れる涙が止まらなくなる。
どうして、泣いているのか。わからない。

わからなくて。


「ぶれ…いく、わかって、る…わかってる」


「…何をですカ…」


「俺は…俺はお前だけ愛しているから…ブレイク…」


それに、死ぬわけないんだろ?とギルバートが笑う。
死ぬわけない?

…いや…自分はもう…





人を愛したくはなかった。愛してしまったら、必ず傷付ける。必ず、先に逝くから。
この青年にはきっと知られてしまった。
そんな恐怖も、この愛しさも、矛盾も、焦りも全部。


「…ギルバート君…すみません…すみませんでした…もう、私には…」


「…そんな顔するなんてらしくないな」


血にまみれた顔が弱々しく笑って言った。

狂気は大人しく項垂れた。頭を撫でられた孤独な犬のように。


「…ブレイク…お前がいいんだ、だから、やめないで」


「でも…」


いいかけて、止める。
大分正気に戻ったようで。


「…そんな恥ずかしいことが言えちゃうようになったんですカ?ギルバート君の変態」


「ち、違っ!!」


くつくつと笑えば顔を真っ赤にして反論してくる。
いつもの会話で、ふと幸せに思う。


頭を撫でればきょとんと見つめてくる。ゆっくり突き上げる。


「あだ、い、痛い…」


「切れちゃいましたからネえ…」


ぶすっとしてギルバートが言う。
痛くないようできるだけそっと突き上げてやる。


「い、痛…ぁ、んっは、あ、あん」


「痛いの好きでショ、ドM」


「ど、えむ、ちがっあっん、はぁ、ん」


そっと口付けると、血の臭いが鼻に通った。
服の端で血塗れの顔を拭いてやる。
乾いてしまいあまり落ちなかったが、服の端は茶色く汚れた。


「ん、んあ、あっ、んん」


「気持ちいいですカ?」


コクコクと頷くと涙を流した。
突き上げながら、抱き寄せる。


「あ、んんっや、ぁ」


「ギルバート君っ、愛してますヨ…愛してます」


抱きしめるとギルバートの腕が背中に回ってくる。
服を掴まれる。


「…ん、イきます…ヨ…?」


「んん、んぁあっ」





そのまま、ごめんなさいと呟いて、珍しく意識を失った。







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