Pandora Hearts

□違法痛愛
2ページ/7ページ





「オズ…」


「ん?」



「お前を…」






顔を見つめ直すとオズは真っ直ぐ此方を見つめ返していた。心が見透かされるような眼だと思った。





「…愛してる…」






笑い返されると思っていたがオズは笑わなかった。




近付けば逃げ出すと思っていたが、オズは逃げ出さなかった。




頬に手を添えれば悪態をつかれると思ったが、オズは黙っていた。







そっと唇を重ねれば抵抗されると思ったが、オズは黙ったまま服の背中をきゅ…と握りしめた。


「好きだ…オズ…」


唇の隙間から震える声が洩れる。その震えは畏れからか。拒絶など承知の上だった。ただ、もうとめることは出来なかった。恋い焦がれたのは己の主人、ましてや同性。赦されるものではない。

しかしもう


「…愛してるんだ…」


どうでもよかった。













「俺も…好きだよ…ギル…」
















ギルバートの動きが止まる。押し当てていた唇を離し、顔を見た。






「な…にを…」

開けた瞳は赤らめた頬と同じくらい虚ろで朧気だった。その瞳にはただ漆黒が映されている。

「返事だよ、返事」

何も言えずに固まっていると今度はオズがギルバートの唇に自身の唇を重ねた。
押しあてて離れる。


「俺も好きだよ…ギルバート…」


黙ってぽかんとしていたギルバートだったが急にはっとして、オズの肩をそっと押し倒した。
再びベッドに沈み込む。両の指先を絡め、顔を見つめるとオズが先に恥ずかしそうに視線をそらした。

「…いいのか…?悪いが耐える気ないぞ?」


「……なんでもいい…してくれるなら…早くして…?」


ギルバートは絡めた指を握りしめた。強く小さな手に触れた。

「こっち向いて…」


オズは大人しく言うことを聞き、ギルバートの金色の瞳を見つめ返した。
ギルバートは何も言わず、頭を下ろした。


次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ