Pandora Hearts
□違法痛愛
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「オズ…」
「ん?」
「お前を…」
顔を見つめ直すとオズは真っ直ぐ此方を見つめ返していた。心が見透かされるような眼だと思った。
「…愛してる…」
笑い返されると思っていたがオズは笑わなかった。
近付けば逃げ出すと思っていたが、オズは逃げ出さなかった。
頬に手を添えれば悪態をつかれると思ったが、オズは黙っていた。
そっと唇を重ねれば抵抗されると思ったが、オズは黙ったまま服の背中をきゅ…と握りしめた。
「好きだ…オズ…」
唇の隙間から震える声が洩れる。その震えは畏れからか。拒絶など承知の上だった。ただ、もうとめることは出来なかった。恋い焦がれたのは己の主人、ましてや同性。赦されるものではない。
しかしもう
「…愛してるんだ…」
どうでもよかった。
「俺も…好きだよ…ギル…」
ギルバートの動きが止まる。押し当てていた唇を離し、顔を見た。
「な…にを…」
開けた瞳は赤らめた頬と同じくらい虚ろで朧気だった。その瞳にはただ漆黒が映されている。
「返事だよ、返事」
何も言えずに固まっていると今度はオズがギルバートの唇に自身の唇を重ねた。
押しあてて離れる。
「俺も好きだよ…ギルバート…」
黙ってぽかんとしていたギルバートだったが急にはっとして、オズの肩をそっと押し倒した。
再びベッドに沈み込む。両の指先を絡め、顔を見つめるとオズが先に恥ずかしそうに視線をそらした。
「…いいのか…?悪いが耐える気ないぞ?」
「……なんでもいい…してくれるなら…早くして…?」
ギルバートは絡めた指を握りしめた。強く小さな手に触れた。
「こっち向いて…」
オズは大人しく言うことを聞き、ギルバートの金色の瞳を見つめ返した。
ギルバートは何も言わず、頭を下ろした。