Dear Moon
□幻のシルバームーン4
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結局一日家に缶詰になって作業をしていたら、朝が来て、夜が来て、迎えの車が来た。鞄と、作曲中のDMだけを持って車に乗り込んだ。昨日の晴天とは打って変わって、あいにくの雨だ。しかし車体を打つ強い雨の音が妙に心地いい。この雨じゃあ星も見えないだろう。そして、温かな光を放つ月もこの曇り模様じゃ拝むことは叶わない。
「星野さん、忘れ物はないですか」
「ああ、うん。ないよ。大丈夫」
「じゃあ、出ますね」
サイドブレーキが下される音で、仕事モードに切り替わる。窓の外の曇り空の遥か彼方で白銀の輝きを放つ星に祈る。どうか彼女が今日も幸せでありますよう。
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