Dear Moon

□幻のシルバームーン3
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目が覚めたら身体が凄くだるかった。汗を沢山かいて、意識がぽうっと離れているのを感じた。空を掴むように真っ直ぐ手を伸ばし、確かに感じたはずの温もりを探す。 ひゅう、と宙を舞う指先。部屋の外はいやに明るいのにまるで海の底にいるかのような錯覚に陥る。



「なるほど夢落ち…ね」




彼女が俺の居場所を知るはずがないし、ひとりで俺に会いに来るわけがない。潮の香りを纏う彼女が教えてくれたあいつの「会いたい」は久々に会う友人との再会を喜ぶものだと分かっていた。



夢は時折、眠る者が望む幻を見せる。彼女にまだ会えないと言いながら、心の底であの温もりに触れたくてたまらない俺の願望を映した。どんなにそれが虚しいものか、全く夢にはお構いがない。ふと、思う。いつになったら、俺は彼女に会いに行けるだろう。笑って、「やあ、元気にしてるか」と話し掛けられるのか。この恋心を隠して、友達のように、傍に近づけるだろう。



今の俺にはそれは到底難しいことだとよく分かる。彼女を思って歌い、彼女の幸せを祈り、命を捧げ、生きている。地球から遠く離れ、銀河の果ての故郷へ戻っても忘れられ無かったんだ。そう容易いことではないというのは百も承知と言ったところ。分かっている。この想いの行き先は無い。気の遠くなるほどの年月をかけその想いの消滅を待つか、想いの形が変わるのを待つしかない。




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