Dear Moon
□幻のシルバームーン2
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地球へたどり着いて、4年が経った。
どんなに時がかかってもいい、という言葉に甘えて、まだ彼女に一度も会いに行っていない。どんな顔をして会いに行けばいいか分からなかった。のこのこあいつに「やあ、」と会いに行ったところで、あいつの隣にはあの王子様が番犬のように張り付いているだろうし、いや…何より、彼女と同じ地球にいられるだけでもうそれで幸せだと感じた。同じこの夜空の下のどこかで、彼女は生きている。そして、あの温かな光で周りの人々を照らしている。
<元スリーライツ 星野光!電撃芸能復帰!!>と紙面を飾ったのは、俺が地球に降り立ってすぐのころ。案外“アイドル”っていうのは、本当に天職なのかもな、なんて心の中で笑う。復帰してからずっと日本でソロのトップアイドルとして、歌や舞台で活動している。大気と夜天が聞いたら爆笑もんだろうな。俺一人でも、なんとかやってるんだぜ。
今回の全国放送の音楽番組で披露するのは、自分で作詞・作曲を手掛けた曲。かつて俺たちがプリンセスに向けて声を張り上げて歌っていたように、俺は今、月のプリンセスを思って、ただ、歌っている。彼女に届くと良い。どこかで聴いてくれるといい。
「星野さん、本番いきます!3、2、―――」
窓から見える、真ん丸のお月様に祈る。
「聴いてください、“幻のシルバームーン”―――」
変わらず、お前を愛している
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