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□盲目の夏
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海風が、静かにシャツを揺らす。
ティエリアは波の音に耳を傾けて目をつぶっている隣の男の頬に、そっと触れてみた。
すこし驚いた顔をしながらロックオンがティエリアの方に向く。
「どうした?ティエリア」
「砂、ついていたから」
本当は、触れてみたかっただけ。
この広大な海を目の前にして、隣に居る愛しい人の体温を確かめたくなった。
生命の源、母なる海。ずっと前からあった存在。
自分たちの存在がどれほど小さなものか…嫌でも感じてしまう。
命には終わりがある。どんなに二人が強い絆で結ばれていたとしても命が終われば二人の関係も終わる。
ティエリアは分かっていた。だからこそ今を大事にしたい。
もっともっと触れ合いたい。でも口にするのは怖い。
ロックオンに触れていた指を離すと、代わりにロックオンがティエリアの肩に腕を回し、抱き寄せてくれた。
「地上、嫌いか?」
「…はい。」
「何で?」
「重力というものが慣れなくて」
なんでそんなこといきなり聞くのか分からなくて、ロックオンの顔をのぞく。
ロックオンはいたって穏やかにティエリアを見つめて微笑んでいた。
そんな笑顔に、僕がいつもどきっとしてしまうのを知っているんですか?あなたは。
「この重力は地球の引力のせいなんだ。
引力ってのはすげーんだぜ。なんでも引き寄せる。」
「俺たちだって…引力みたいに引き寄せられた。不思議な力だろ?」
「引力みたいに引き寄せられた…ならいつか離れてしまう…?」
「いや。離れない。引力は無くならない。俺たちは…離れないよ」
ロックオンは寂しそうなティエリアの頭をなでながら優しく囁く。
「…わたしも、離れない」
ロックオンの笑顔につられて微笑む。
そう、離れない。もし…もし引力が無くなっても、私はあなたから離れない。
どこまでもついて行く。いいでしょう…?
夏の日差しが降り注ぐ。
アレルヤが呼ぶ声がした。