お題系

□双子の英雄
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なんということだ。僕がプラズマ団の王としてやってきたことは、全てゲーチスの野望のためだったなんて。僕はゲーチス――お父様に利用されていたなんて。

今までポケモンの自由のためにと生きてきたはずだ、だけどそれは本当にポケモンが望んでいたことなのか?そしてそれが本当に僕が叶えたかった夢なのか?


「僕は…僕、は…」

「(N…)」


隣に堂々と立つレシラムはドラゴンタイプとは思えないくらいに優しい目でこちらを見つめたものの、何か声をかけようとはしなかった。いや、できなかったのだろう。


「…いわば人間の心を持たぬバケモ…」

『違ーう!!Nはそんな人なんかじゃない!!』


驚いたのはお父様からの非情な言葉ではなく、それを否定するもう一人の英雄だった。何故そんなことが言えるんだ、今まで僕は君をずっと傷つけてきたのに。


『あんたっ父親のくせに息子のこと何も考えちゃいないのね!あんたの変な野望のせいでね!Nはずーっと苦しんでいたのよ!?私はこの目で見たの!時々見せる切なく苦しそうな素顔をね!』


英雄は僕に振り返り、さらに叫ぶ。


『N!!あんたは何も悪くないのよ!!』


何も…悪く、ない…?


『…ゲーチス…あんただけは絶対に許さないんだから!!』


震えを必死で押し殺し、お父様と英雄はお互いの望みをかけて最後の戦いを始めた。


英雄よ、今君に問いたい

君は今誰のために戦っている?

自分のためか?ポケモンのためか?

イッシュの人々のためか?…それとも、





("僕のためか"と思う自分は、自惚れているのだろうか)



101117 美瑠





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