騎士の奏でる鎮魂歌

□聖職者の鎮魂歌
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「マルディンが断った?」
広い、大理石の敷き詰められた部屋で、上級聖職者の服を着た者達が話し合っていた。
一番奥には教皇カフィン。
いらだたしげに指でテーブルを叩く。
「ああ。他の者にしてくれ、だそうだ。」
「それはならん!有能な者は他に居ないし、なにより後ろ盾が強い!」
「我々で扱えそうな、尚且つ後ろ盾のないあやつがもってこいのはず。」
「………まぁ、彼にとっては、いきなりの大抜擢ですからねぇ。怪しんでいるのかもしれませんよ?」
矢継ぎ早に意見が飛び交い、収拾がつかなくなる。
カフィンが手を打ってそれを静め、ずっと黙っている青い長髪の男に目を向けた。
「…ノストラディア侯爵、どう思われる。」
瞳を伏せていたその男は、様子を窺う彼等を嘲笑するように笑い、静かに立ち上がった。
「…生憎だが、わたしはこのような話し合いに来たわけではないのでな。これで失礼しよう。」
かつかつと靴の音が響き、呆気にとられていた皆がざわつく。
教皇は苦渋の顔で侯爵を見遣り、声をかける。
「貴方とて、侯爵の身で有りながら聖職者でもあるのだ。国を収める義務が
「ならば。」
カフィンの言葉を遮り、扉の前で振り返る。
ひたと据えられた紺碧の瞳に見入られ、カフィンは言葉を飲み込む。
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